事務所だより

~15周年特集 1000万円の特別受益が認められた事案(相続) 

2016年06月16日

1 事案

 Aさんの父親が亡くなり(母親はすでに数十年前に死去)、相続人であるAさんとCさんの間で遺産分割の話し合いを試みたが、話がまとまらず、弁護士に相談に来て解決に至ったという事案を1つ紹介します。
 Aさんと父親は同居し、Aさんは父親が亡くなるまで父親の介護をしていました。Cさんは進学を機会に早々に県外に出てしまい、それ以来、父親たちとは別居していました。
 父親の遺産としては、居住していた土地と建物、預貯金、投資信託があり、AさんとCさんで、分割の割合は半分ずつにするということ自体に争いはありませんでした。しかし、Aさんは、生前、父親からCさんに一軒家の購入資金を出したという話を聞いていたため、この贈与について、特別受益の有無が争いとなっていました。

2 交渉の結果

 弁護士が入り、分割方法の協議に入り、特別受益についての交渉に入りました。
 Cさんからは、父親からまとまった金銭の援助を受けたが、Cさんの妻と子宛てであり、自身への援助とは無関係で特別受益には当たらないと主張しました。通帳の履歴を見ると、現に、合計して一千数百万円の送金がありましたが、送金先はCさんの妻と子となっていました。原則として、特別受益は相続人のみを対象としていることを知ってそのような形をとったものと考えられます。しかし、裁判例上も、形式的には特別受益に当たらなくても、実質的には相続人への贈与とみることが出来る場合には特別受益とみるとの扱いがあるため、調査を進めることにしました。
 そこで、Cさん自宅の土地建物の登記を調べたところ、Cさんの妻と子への入金のわずか数日後に、無抵当権で売買契約がなされ、Cさんの単独名義の登記がされていました。この事実をCさんに突き付けると、父親からの援助は一軒家の購入資金に充てたものであり、実質的にCさんに対する贈与で、特別受益であること認めました。結果として、特別受益を反映した金額での分割案で合意ができ、Aさんは適正な財産を相続することができました。

名古屋北法律事務所では所属弁護士が特別受益を争う相続事件に取り組んでいます。詳しくはこちら

弁護士 新山直行

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