事務所だより

厚生年金脱退手当金99円支給決定と日韓関係を考える(1) 豆電球№121

2011年06月27日

23日、社会保険審査会で、朝鮮女子勤労挺身隊訴訟の原告7名に対する99円の脱退手当金支給処分についての公開口頭審理が行われた。

当日は、韓国から原告2名37名が傍聴行動にかけつけ、厚生労働省前でアピール行動を行った後、代理人らとともに会場入りした。韓国のテレビ局数社も取材に来ていた。
社会保険審査会は、霞ヶ関の厚生労働省18階にある。折からの東日本大震災、福島原発事故の影響で節電が実施され、廊下は真っ暗。それだけならいいのだが、審査会会場の冷房温度も高く設定され、暑気がメガネが曇る程であった。

公開審理には、原告、弁護士、通訳や6名のほか、傍聴者37名が会場を埋め尽くし、審査委員たちは目を丸くしていたようだった。冒頭、内河団長が挨拶を行った後、原告の梁錦徳さん、金中坤さんが意見を述べ、代理人弁護士を代表して私が意見を述べた。
私は、冒頭、保険者側から当日示された答弁書について触れ、原処分後、原告の梁錦徳さんが2010年2月に日本政府に対する要請行動を行った際、細川厚生労働副大臣が「失礼な金額だと思う。大臣に報告したい」と述べたこととを指摘し、厚生労働省は当該要請を受け再検討を行った上で今回の答弁を行ったか否か回答されたいと釈明を求めた。
その上で、
(1)原処分は、「全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と保障した日本国憲法25条のもとで、労働者の所得保障のための制度である脱退手当金について、11ヶ月働いた労働者の脱退手当金が99円等という処分が憲法違反であることは誰が見ても明らかではないか
(2)日本国内では消えた年金問題ってており、昭和20年分については473.240という乗率を掛けて遅延加算金を支払うことになっているが、なぜ、この程度の配慮が出来ないのか、という意見を述べた。
また、最後に、原告らが65年間脱退手当金を受給できなかったこと、98年に社会保険事務所に要請してから10年以上経過したこと、99円という侮辱的な金額で説明もなく支給決定通知書を送りつけたことについて、厚生労働省は謝罪すべきであると述べた。傍聴席は拍手で答えた。

私は、是非、日本政府にはこの問題を真正面から捉えて、再考してほしいと心から思う。99円の年金支給に異議を述べるために、韓国から40名近い人たちが、数万円の経費をかけて陳情に来ている背景には、韓国国民の熱い視線がこの問題についての政府の措置に注がれていることを示している。
私は、この問題を解決することは、真の日韓友好のために有益であると考えるものである。

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