事務所だより

三菱派遣切り裁判、始まる!豆電球No.87

2009年06月19日

三菱派遣切り裁判、始まる!

5月28日に第一回口頭弁論が行われた三菱派遣切り訴訟は、名古屋北法律事務所が重視して取り組んでいる労働裁判の一つである。
名古屋北法律事務所の近くに三菱電機大曽根工場があるが、そこでは昨年末以来、大量の派遣切りが行われた。社宅を追い出され路頭に迷う若者、子供の養育責任を負い解雇されて茫然自失となった熟練の派遣労働者等。その中で、三名の労働者が三菱の雇用責任を追及するために立ち上がり、名古屋市北部地域の労働組合が支援に入り訴訟提起に至ったのが、同裁判である。
原告3名は、被告三菱電機大曽根工場において、被告三菱電機の指揮監督の下でサーボーモーター組立・検査業務に従事していたものであり、30代の独身成年、中学生の子供を母子家庭で養育する30代の女性労働者、妻子を持ち7年近く三菱電機で派遣社員として働いてきた40代の男性労働者である。
被告三菱電機は、1990年代に入り、人件費の節減、雇用調整を容易にするため、様々な形式にを偽装し、直接雇用しない労働者をその指揮監督下において労働させるようになった。当初は、請負形式を偽装し(偽装請負)、製造業に派遣が認められるようになった04年以降は派遣という形式を取るようになった。
各原告は、正社員と全く同一の労働を行ってきたにもかかわらず、景気が悪化するとモノのように切り捨てられた。その屈辱とくやしさの中から、三名の原告は、「人間としての尊厳を取り戻したい」と三菱電機とたたかうことを決意し、同社に対し直接雇用を求める訴訟を提起したものである。
第一回口頭弁論では、原告のMさんが意見陳述を行った。Mさんは、7年近くの間、三菱で派遣労働者として働いた。いずれは正社員にしてやるという言葉を信じ、シンナーを使っての塗装作業等、危険できつい仕事も我慢して働き続けてきたという。
その間、契約更新が36回なされ、賃金は時給で20円上がっただけであったという。
私は、この36回、20円という言葉に胸を打たれた。
36回考えて見て欲しい。36回契約更新の機会があったということは、36回、首にされるのではないかという不安を抱いてきたということであり、36回、正社員になれるのかなという期待を裏切られ続けてきたとも言える
20円7年近く働いて20円の賃上げ。三菱電機は、電機産業のリーディング企業の一つと自負する大企業だが、その労働者に対する処遇として恥ずかしくないのだろうか。
定昇、あるいはベースアップもされる正社員に比べた余りに差別的な取り扱いではないか。Mさんは、意見陳述の中で、自分が働いている間に三菱電機が内部留保を1兆7000億円増やしたこと、29名の役員に年間21億円もの役員報酬が支払われていた事実を指摘し、そのほんの一部でもまわせば、年末の大量の派遣切りは回避できた筈だと訴えた。
傍聴席から拍手が起き、裁判長が制止したが、私も代理人席で拍手したかった。
この裁判は、派遣労働という、安価でいつでも解雇できるかのような不安定な雇用形態を認めた政府の新自由主義的な構造改革をただす重要な裁判である。
何としても勝利しなければならないと思っている。
なお、是非、同裁判を支える資金カンパにご協力いただきますようお願いします。
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