事務所だより

麻生内閣の給付金騒ぎに想う 豆電球No.75

2008年11月13日

麻生内閣の給付金騒ぎに想う

給付金騒ぎに政治を思う

解散・総選挙の顔として選ばれた麻生が、解散もできず、景気対策の目玉として打ち出した給付金問題で迷走している姿を見ていると、怒りを通り越して悲しくなった。
私は、自民党の従来の政治路線の抜本的な刷新が必要であると考えるものである。外交路線だけでなく、米国流の市場経済万能思想に迎合し、貧困の拡大、社会保障切り捨てによる矛盾の激化(最近の妊婦の救急搬送拒絶による死亡事件等、医療の崩壊は悲惨である)をもたらしてきた自公政権は、直ちに退場すべきであると考えている。
しかし、ここで言いたいのはそういう政治路線の是非ではなく、政治とは何なのか、政治家とは何なのかということであり、政治そのものへの国民の信頼が失われつつあるということへの危惧である。日本の保守よ、しっかりせよと言いたい心情である。

一人1万2000円の給付金をばらまき、その後に消費税を導入するという訳だが、所得制限を設けるのか否か、どういう方法で支給するのか等について与党内でも意見が別れ、地方自治体に丸投げするということで与党内では決着がついたようだ。
娘から、毎日アルバイトして学費を稼ぎ、学生食堂での昼のランチも節約している友人の話を聞いたことがある。1万2000円は貴重なお金かもしれない。
しかし、1度限り1万2000円支給し、その後で消費税引き上げというのは、景気対策、生活支援対策になるのか。消費税は、毎日毎日支出する生活費に課税されるものであり、所得の低い世帯にこそ負担が大きい逆進性という性格を色濃く持つ税である。国民の財布のひもが固いのは、その日の暮らしが厳しいということもあるが、将来への不安がとても大きいということがある。子供が大学に進学したとき、自分が失業したとき、病気になったとき、高齢になったとき、自分と家族の生活はどうなるのだろうと心配してせっせと貯金しているからである。教育費の軽減、医療・社会保障の充実、雇用対策と大企業のリストラに対する規制といった対策の必要性が叫ばれて久しい。財源が必要というなら、大企業に対する特権的な減免税、有価証券取引課税の減税措置の撤廃、バブル時代の地価が高い時期に基礎控除が引き上げられた結果、半ば空洞化してしまった相続税の適正な課税等に踏み込むべきだ。こうした対策なしに、1万2000円を口座に振り込んでも預金残高になるだけで消費には回らない。
そもそも、国民一人あたり1万2000円づつ渡してあげれば、消費が増え、内需が増えるだろう等という余りにも素人っぽい政策を打っているだけで政治家が務まるなら、誰でも政治家になれてしまう。ブロフェッショナルとしての政治家の誇りというものを少しは感じて欲しい。

給付金ばらまきが選挙対策であることは誰もが感じている。自民党幹部は、給付金交付を打ち出した後の世論調査で、これに対する支持が多く、政権支持率も上がって喜んでいるようだが、心の中で舌をべろっと出しながら、「賛成」しているに過ぎない。庶民は、それほどにはたくましいものだ。それさえ知らないとすれば、麻生は裸の王様である。
選挙目当ての国民迎合であることは、子供からも見抜かれてしまっている。
どうか政治家の威厳というか、政治に対する国民の信頼を損なわないでいただきたい。政治がなめられてしまう。麻生さんよ、国民に媚びるのは秋葉原の街頭演説だけにしてもらえないだろうか。
国民に媚びているといったが、私などは、逆に、札束で(とっいても1万2000円だから、ぺらぺらなのだが)ほっぺたを叩かれているような気がする。主権者である国民を余りにバカにしてはいないだろうか。筑豊の炭鉱王といわれた麻生家の跡取り息子で東京ドームが何個も入る邸宅も持つセレブ政治家の究極の「上から目線」を感じて、全く不愉快である。

給付金対策は、公明党の突き上げで自民党が飲まされたという声も聞く。公明党の票がなければ自民党が持たないと言う事情はわからないではないが、それにしても長年の、保守政治の中心を担った政党としての矜持はどこに行ってしまったのか。
実は、この点に自民党の政党としての体質が浮かび上がっている。自民党は、特定の理念、政治路線で集まった政策政党というよりは、政権の場にありつくということだけで集まった政治集団という点である。しかし、このような対質の自民党では、今日の政治の行き詰まりを打破することはできない。アメリカでは、チェンジ(変革)を掲げたオバマが勝利した。与野党を問わず、政党・政治家は、将来へのビジョンを示し、政策的な対立軸を明確にしてほしい。政策に確信を持っているなら、それが受け入れられないなら下野して再起を期するまで、という覚悟が持てる筈だ。そうでなければ、責任ある政党とは言えまい。堂々とした政治をやっていただきたい。

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