投機マネーの暴走を考えるー講演会の感想 豆電球No.70
投機マネーの暴走を考えるー講演会の感想
9月6日、日本共産党愛知県弁護士後援会主催の講演会「投機マネーの暴走ー日本経済と世 界経済はどうなっていくのか」に参加した。講師は、「金融 化の災い」等の著者である経済学者の大槻久志氏。「学者らしくない」(?)平易な語り口、ジョークをふんだんに取り入れた講演に会場はしばしば爆笑に包ま れ、著書「金融化の災い」のサインセールも盛況でした。
大槻さんは、サブプライムローン問題や投機マネーの問題を議論する前提として、銀 行のもつ信用創造機能をきちんと理解することが必要だとした上で、銀行 は「持っているお金を貸す」のではなく、融資先の通帳残高の入金欄に記帳して信用を創造するものであること(無から有を生み出すこと)、短期金融市場や日 銀の準備預金の仕組み等、金融システムの骨組みのイロハをわかりやすく説明しました。
大槻さんは、戦後の世界資本主義の構造変化とマネーの肥大化に触れました。イギリスやアメリカは第二次世界大戦までの間に重化学工業、鉄工業等を展開し ていたが、その時代に銀行や株式会社制度等が発展し、金融資本の成立がレーニン、ヒルファーディング等により主張され、「銀行が一番威張っている時代」 「銀行員の給料が一番高い時代」が続く基礎となったと指摘。第二次大戦前の時点で過剰生産、恐慌の時代となり、戦後は自動車産業、電気機械産業がリーディ ングインダストリーとなった、日本は、約100年遅れたが、昭和50年頃までに製造業の基盤を形成し、その後は銀行の製造業向けの貸出額は増えていない。 このように、産業構造が大きく変化し資金需要も大きく変わった。これが投機マネーの肥大化の背景にある。
その後、肥大化したマネーが向かったのは、不動産、土地投機であり、大まかに言えば、日本の銀行はバブルの時代に200兆円投資し、120兆円以上の損 をした。これが失われた10年である。アメリカのサブプライムローンも、一言で言えば「グリーンスパンが作り出したバブルだ」としました。
大槻さんは、マネーの肥大化についても、世界にごろごろしているとんでもない金持ち、50億ドル、100億ドルといったカネを動かす資産家たちの私募 ファンドとしてのヘッジファンドがあり、そうしたファンドや機関投資家の巨大なマネーを住宅投資に導いたのが、グリーンスパンのサブプライムローンである と指摘しました。アメリカは移民国家として人口が増大し、住宅需要の増加、住宅価格の上昇が続き、その過程で、低所得者向けのサブプライムローンが生まれ た。本来は支払い能力がない者にも住宅価格の値上がりを見込んで購入させ、最終的には銀行が値上がり益を利子や手数料の形に改造して銀行や投資銀行の懐に 取り込んだ。さらに、銀行は、ローン債権を証券化して膨らませ、世界の銀行等にリスクを分散し、その過程でも「手数料」等の名目で懐に入れた。
これが、住宅価格の下落で破綻し大混乱に陥ったのが、サブプライムローン問題である。
その後、肥大化したマネーは、原油、銅、トウモロコシ等の商品投機に流入し、それが原油や食料品の高騰等につながり、庶民の生活が痛めつけられているとしました。
大槻さんは、重大なのは、銀行が、ヘッジファンドや機関投資家に巨額の融資を行って信用取引を行わせていることだとして銀行の責任に言及しました。ファ ンドは、取りっパグれがなく、融資先に困っていた銀行にとって格好の顧客であり、その自己資金の10倍、100倍というカネを融資して、投機を助長したも のであり、結局、投機マネーの暴走の主役は銀行であるとしました。
同時に、大槻さんは、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)と言われる新興諸国の経済発展に言及し、例えば中国経済については「13億人が鉄や 食糧を食べ始めた」影響は大きく、既に世界最大の鉄鋼生産国になっていると指摘。先進国並みに発展すれば、鉄や紙等の素材、食糧を莫大に消費することにな る。今後の世界経済はインフレーションの傾向を強めることになり、「安い資源」を輸入して加工し輸出するという貿易構造に依存してきた日本経済は極めて厳 しい局面となるとしました。トヨタ等は、既に海外での生産比率が高く何とかなるが、特に製造業は厳しい。中小企業は、更に厳しい。
では、どうやつて行くべきか。ドイツは、輸出比率は40%以上。オランダやベルギーなどは更に高い。日本も、ヨーロッパの経験に学び、中国やインド、中 東諸国等との関係を深める必要がある。靖国神社に参拝したり、アメリカ頼りの自民党ではダメだ。米国の介入を排除し、東アジア、東南アジアとの共同市場を 模索する必要があり、そのためには「互いに売り互いに買う」ということが必要だ。
大槻さんは、今後、庶民の暮らしはますます大変になるが、「日本人は我慢してしまう」傾向にある、昔と比べれば物質的には生活は豊かになっており、我慢 しようと思えば出来てしまう、それではダメだ、我慢をしている間に「敵」は立ち直る、今こそ変革の声を挙げる必要がある、たたかう必要があると強調されま した。
講演後、会場からは、?「投機マネーの規制としてどのような方策が考えられるか。トービン税は有効か」?「ドルが暴落しないのは何 故か」といった質問が 出ました。大槻さんは、建玉規制や証拠金率の引き上げ等もあるが、バックにいる銀行に対する規制、すなわち金融政策が重要(?、)ドルが暴落して困る日本 や中国がドルを買い支えている、日本は貿易黒字をドル建てで保有しており中国も同様だ。自立したアジア経済圏が出来ていないことが影響している(?)等と 答えました。