事務所だより

日本労働弁護団結成50周年記念総会に参加して 豆電球No.39

2007年11月12日

日本労働弁護団結成50周年記念総会に参加して

11月10日・11に東京虎ノ門で行われた日本労働弁護団結成50周年レセプション、第51回総会に参加した。労働弁護団総会に参加するのは、約20年ぶり。同期の弁護士から「長谷川が来るとはめずらしい。どういう風の吹き回しか」といぶかしがられた。
レセプションでは、福岡の荒巻さん、春の京都市長選挙に出る中村さんら同期の弁護士、南部法律事務所で司法修習し今は自治労連弁護団で活躍する八王子の 尾林さんらと歓談し今は東京地裁川越支部で判事をしている竹内浩史さんとは裁判員制度について意見交換することができ、気持ちいい酒宴であった。

労働者の権利は、今、大変な状況にある。格差と貧困の広がりである。世界第2の経済大国と言われる日本での新たな貧困の広がり。一部の大企業と高額所得 者に富が蓄積され、他方のでは貧困が蓄積され広がりを見せている。全労働者の三分の一がパート、派遣等の非正規雇用となり、正規雇用の中では過酷な長時間 労働、こころの病の増加と過労死といった状況が生まれている。
こうした中で行われた50周年記念レセプションは、これまでの50年の輝かしい歴史を振り返ると共に、新しい時代に立ち向かう労働弁護団の方向性を指し示すものとなったと思う。

各ナショナルセンターの代表も顔を揃えていた。連合は古賀事務局長が挨拶を行った。連合は、非正規労働者の組織化に舵を切り、労働者派遣法については派 遣労働の範囲の自由化を行う以前の状態に改正することを求める姿勢を明確にしてきた。日本と同様、労働組合の組織率、影響力の低下に苦しんでいるアメリカ では、最大のナショナルセンターであるAFLーCIOの指導部を改革派が握り、非正規雇用、移民労働者の組織化等の新しい動きを強めているが、連合が、社 会党一党支持と反共主義に固執してきた総評運動の誤りを改め、労働者の要求を真剣に受け止め、真に資本から独立した労働組合として、全労連等とも共同し、 ナショナルセンターの枠を超えた幅広い共同に乗り出してほしいものだ。
中央労働委員会会長を務める菅野和夫東大教授は、戦後の混乱期、安保・三池闘争の高揚、全逓中郵判決等の公務労働者の政治的自由と労働基本権の確立をめ ざすたたかい、石油ショック後の新たな労働運動の歩み、労災職業病問題、規制緩和路線のもとでの労働法制見直しに対応した運動等の歴史を振り返りながら、 労働弁護団の果たした役割に賛辞を送られた。
石田真労働法学会会長は、労働法は1990年代に入って司法試験科目から外され、日陰の道を歩んだが、司法制度改革のもとで法科大学院が設置され、労働 法が試験科目になり、学生に最も人気がある科目の一つになっていることを紹介した上で、志のある若手が労働弁護団に接近できるよう労働弁護団としても工夫 と援助をして欲しいと述べた。

総会では、労働法制の改悪に反対する取り組み、特に派遣法については派遣労働に対する一層の規制緩和を求める財界の動きに反対し、規制の強化を求めること、解雇規制の緩和(解雇への金銭解決制度導入)等が取り上げられた。
06年4月にスタートした労働審判は、司法制度改革の労働検討会の中で提起され実現に濃きづけたものであり、3回以内の期日で終了する迅速さた解決率の 高さから、利用者が増え、07年6月までの申立件数が1539件になっていることが報告されたが、未だ多数の労働紛争が適切に解決されていないと考えら れ、一層の利用促進をはかることになった。
個別労働紛争では、社会保険労務士が都道府県労働局のあっせん等に代理人として参加することとなった事に伴い、必要な援助を行う必要があるが、他方で、 団体交渉に使用者側代理人の立場で参加し不正確な法知識に基づき介入する事例も散見され、これらの事例では厳しく対処する必要性が指摘された。
貧困と格差の広がりについては、債務整理や生活保護問題に取り組んできた弁護士たちの間で「貧困の根底に労働問題がある」との認識が広がり、労働弁護団との共同を求める新しい動きがあることが報告された。

討議では、労働事件に取り組む若手弁護士を増やし、労働弁護団の組織拡大をすすめること等が論議された。
石田教授が「労働法の復権」に言及したことは前述の通り。日本の国民の圧倒的多数は、労働者であり、中小零細企業である以上、弁護士の多数はこれら勤労者層に関わる紛争処理と権利擁護の活動に業務基盤を求めることになる。
弁護士会の中では、司法制度改革の一環として法曹人口の増員が行われたことについて、ビジネスロイヤーが増え、儲け主義の弁護士が増えることへの危惧ば かりが語られることに、私は半ば辟易しているのだが、労働者側に立って労働事件を取り組む弁護士、人権派弁護士を増やすチャンスと捉えるべきだ。

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