中村区役所前にて(おにぎり会の活動に参加して)
肌で感じた
この不景気(不況と言うべきでしょう)はいつ回復するのでしょうか。
年末にかけて昨年のように「派遣村」のような活動が必要になるのでは、昨年以上にひどいことになるのでは、ということが言われています。
景気悪化の原因は金融バブルの崩壊だけでなく・・・と、グローバル企業やこれまでの政治の責任を追及しなければなりませんが、ここでは割愛します。
この名古屋市では、中村区役所が生活保護申請の対応などで日夜奮闘していることがよく知られています。そしてそこでは、「おにぎりの会」の方たちが活躍しています。
「おにぎりの会」の方たちは、やってくる相談者、申請者の方たちに栄養を取ってもらおうと、毎日おにぎりと味噌汁を作り、それを中村区役所前で配っています。
11月4日、中村区役所に行ってきました。
11時半ごろに到着すると、区役所前の歩道の、区役所から少し離れたところにパラパラと並んでいる人たちがいます。
私は事前に「おにぎりの会」のIさんに連絡をし、お手伝いあるいは見学をさせていただきたいとお願いしていました。Iさんはまだお見えになっておらず、私は区役所内の生活保護係に行ってみることにしました。
窓口には約20人の方(相談者、申請者)がいらっしゃいました。ボランティアで申請手続きの相談に乗り、申請を手伝っている方も。窓口の担当者はみな、真剣に話を聞いて対応しているようでした。以前、「毎日100人以上の方が窓口に来られる」ということを聞いていましたが、おそらく今でもそのくらいの方がいらっしゃるのだろうと思いました。
区役所の外に出ると、並んでいる人が少し増えているようでした。Iさんがいらっしゃらないのでそこで待っていると、区役所前で座っている人に「あんた初めて?」と声をかけられました。並ぶとおにぎりがもらえることを教えてくれたその人は、おにぎりの会のボランティアの方でした。
自分が手伝い(見学)に来たことを伝えると、その方は快く迎えてくれ、他の仲間にも紹介してくれました。ボランティアスタッフの中には「自分もここで助けられた」という方も。
12時近くにIさんら3人が、自転車におにぎりと味噌汁を載せて到着。他のスタッフの方も少しずつ集まって増えています。
みなさんは、おにぎりと味噌汁を配る準備をする係、並んでいる人を整列させる係に分かれてテキパキと仕事をします。手際の良さに感心し、昨年末からずっと続けてこられているみなさんに敬意の念を抱きました。ときおり、区役所の前に車が止まり、古着などを届けてくれる方も何人かいらっしゃいました。
この日、区役所前に並んだ人は60〜70人くらい。「先週は130人の日もあった」とスタッフの方が教えてくれました。会では、毎日おにぎりを90個作るそうです。全員に配ったら足りなくなる日もあるということですが、初めて相談や生活保護の申請に来られた方を最優先に列の先頭に並んでもらうようにするなど、配慮がなされています。味噌汁を、赤味噌と白味噌の両方を用意するという気配りも。この日は一度おにぎりと味噌汁を受け取り、それを食べたあとにもう一度並ぶ方も多くいらっしゃいました。
おにぎりが配られた後、古着が配られました。この日は晴天でしたが、冷たい風が吹いて冬が近いことを感じさせます。30代前後の、痩せて背の高い青年が半そでで来ていました。古着は人数分も無いため、並んだ順に一人一着です。その彼は紺色のジャケットを見つけ、さっそくはおっていました。「面接に行くときにきちんとした服装でないといけないので、スーツが欲しいと思っていた」と、少し小さめのジャケットを着て去って行きました。
生活保護の申請は、役所によって対応もまちまちです。「水際作戦」と言って、申請書すら渡さないところもあると聞きます。第三者が申請に同行するなどして、きちんとした対応をさせることも必要です。
中村区役所では、職員、申請同行者、おにぎりの会の人たちが一緒になって貧困に立ち向かう姿を見ました。他の自治体でも同じような取り組みが求められているのだろうと思います。自分には何ができるだろう、と改めて考えさせられました。
そして、衣食住のサポートの次を考えなければなりません。会のボランティアをしている男性が言いました。「確かに、一番ひどいときに比べれば求人は増えてきているが、派遣がほとんど。派遣切りに遭った経験があるから、また同じ目に遭うのではと思うと飛び付けない。」
企業が人間を使い捨てにすることを許している現行の労働者派遣法を、一日も早く抜本改正することが求められていると強く感じました。
2009年11月17日
事務局 K