離婚をめぐるお金の問題について

生活に必要なものだからこそしっかりと決める必要があります。

お金の問題は離婚後の生活に大きな影響を持つ大切な問題です。しっかりと権利を主張し、後悔のないようにする必要があります。
離婚に関するお金の問題は主に、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割の4つがあります。

財産分与について

財産分与とは、結婚生活の中で、夫婦で協力して築き上げてきた財産を清算し、夫婦それぞれの個人財産に分けることをいいます。財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された財産で、夫婦のいずれに属するか明らかでないものは、原則的に夫婦共有財産と推定されます。

財産分与の対象について

財産分与の対象は、結婚前から持っていた財産や、婚姻期間中に相続など他方配偶者の協力なしで得た財産(特有財産といいます)を除いて、預貯金、不動産、有価証券等全ての財産が、夫婦のどちらの名義であっても、対象とされます。
また、将来支給される予定の相手方の退職金や年金も、支給されることがある程度確実に見込まれる場合であれば、対象となる場合があります。
財産の分け方は、財産を作るにあたっての寄与の度合い、経済的に弱い当事者の離婚後の扶養の必要性などで決まります。専業主婦でも夫の生活を支えたという点で寄与があり、半分近い割合を認める例も多くあります

財産分与の請求について

財産分与の請求は、離婚が成立した後でも可能です。ただし、離婚が成立した日から2年以内にしなければいけません。また、財産分与は慰謝料と違い、離婚原因を作って夫婦関係を破綻させた者(有責配偶者)からも請求することができます。

財産分与のポイント

  • 財産分与では全ての財産が、夫婦のどちらの名義であっても、対象となる。
  • 専業主婦でも夫の生活を支えたという点で寄与があり、半分近い割合の財産分与を認める例が多い。
  • 財産分与の請求は離婚が成立した日から2年以内に行わなければならない。

慰謝料について

慰謝料とは、一般的には「精神的苦痛に対する損害賠償」と言われており、離婚の場合の慰謝料は、婚姻関係の破綻(離婚)の原因を作った当事者が、それによって相手方の被った精神的苦痛を補償するために支払うお金(損害賠償)のことを指します。

慰謝料を支払う判断基準について

慰謝料を支払うべき破綻原因として典型的なのが、不貞行為です。
次によくあるのが、配偶者の日常的暴力により破綻した場合で、さらには、浪費等により家計を破綻させた場合や、家族を顧みずいわば家族を見捨てた(悪意の遺棄)ような場合も含まれます。
性格の不一致など夫婦のどちらか一方に離婚の責任があるとはいえない場合、あるいは責任が同程度の場合には、お互いに慰謝料を請求できない場合もあります。

慰謝料の金額について

残念ながら慰謝料には、法律上決まった額というのはありません
ただし、裁判において判断する場合には、一定の基準がないと全て担当裁判官の胸一つということになり、妥当とは言えません。そこで、これまでの裁判例を基にした一定の統計的な基準というものが形成されています。
それによりますと、違法行為(不貞、暴力等)の回数・頻度・程度など違法行為のひどさ(違法性の高さ)と婚姻期間を中心に、その他の事情を総合的に判断して決められています。だいたい100〜500万円というのが多数だと思われます。

慰謝料の請求について

慰謝料は、違法行為の時から3年以内に請求する必要があります。

不貞行為の相手方への請求について

不貞行為は、配偶者単独の行為ではなく、必ず不倫相手がいます。その意味で、不貞行為は、不倫相手と配偶者の共同不法行為であり、不貞の被害者は、不倫相手にも慰謝料を請求することができます
配偶者とは婚姻関係を続けていきたいという場合、不倫相手にのみ慰謝料請求をすることも可能です。
不倫相手への慰謝料の金額ですが、不貞行為の態様・回数、婚姻期間、被害者の精神的苦痛の程度などを考慮して決められます。

慰謝料のポイント

  • どちらか一方に離婚の責任があるとはいえない場合、慰謝料を請求できない場合がある。
  • 慰謝料の請求は、違法行為を知った時から3年以内に請求しなければいけない。
  • 不貞慰謝料は、配偶者と不倫相手の双方に請求でき、一方にだけ請求することも可能。

養育費について

養育費は、未成年の子を養育する夫または妻が、元配偶者に対し、原則子どもが成人(20歳)に達する月までの生活費、教育費等の費用を請求するものです。請求できるのは、養育監護を行う側であり、親権とは必ずしも一致しません。そして、養育費とは子どもの権利です。そのため、離婚時には養育費をしっかりと決めておく必要があります。

養育費の金額について

養育費の金額は、養育費を支払う側の収入と養育費を請求する側の収入や子どもの年齢が基本的要素として考慮されます。そのほか、家賃の負担・程度等の付随的要素も含まれます。
養育費については、家庭裁判所が作成した基準表が様々な文献に掲載されていますが、これは家庭裁判所の調停委員も参照しているものです。同基準表では、自営業者と給与所得者とで別の数値が使われます。
また、夫婦の合意があれば、これとは異なる養育費の金額を定めることもできます。

養育費の支払い義務について

養育費の支払義務というのは、親であることに基づいて養育に必要な費用を負担すべき義務ですので、相手方または自分の再婚によっても、親子関係が無くならない以上、養育費支払義務が消滅することはありません
しかしながら、実際の養育費の額については、相手または自分の経済状況によって変動する可能性が常にあります。たとえば、義務者が失業したり、権利者の収入が増加したりというのが典型例です。
それらと同様に、権利者が再婚して扶養されるようになったり、あるいは義務者が再婚して扶養家族が増えたような場合は、事情変更があったものとして、養育費の額を減額するよう求めることは可能です。
その場合でも勝手に養育費を減らすことは許されず、相手の同意を得る必要があります。同意が得られなかった場合には、家庭裁判所に養育費の減額調停を申立てる必要があります。

養育費の請求について

養育費は、子どもに必要がある限り、いつでも請求ができるものです。しかし、離婚時にしっかりとした取り決めを行っていなかった場合、その後の請求時に難航することもあります。そのため、養育費の取り決めは口約束だけではなく、公正証書にしておくことが最適です。もし、相手方が払わなくなったとしても、強制執行(差し押さえ)ができるようになります。

養育費のポイント

  • 養育費は子どもの権利。そのため、強制執行が可能なかたちでの取り決めが望ましい。
  • 養育費は支払う側と請求する側の収入や子どもの年齢が基本的要素として考慮される。
  • 親子関係がなくならない以上、養育費の支払義務が消滅することはないが、減額は可能。

年金分割について

離婚をしたときに、厚生年金の一部を当事者間で分割することができる制度で、離婚の際に合意をしておくことで将来、相手の年金の一部を受給することができます。

年金分割の割合について

老齢厚生年金の額は、厚生年金加入中の標準報酬月額に基づいて計算されますが、分割されるのは、この計算の基礎となる「標準報酬」と言われる部分で、婚姻期間中の標準報酬が多い方から少ない方に対して、標準報酬が分割されます
たとえば、婚姻期間中の夫の標準報酬総額が1億円で、妻がゼロ(全期間家事専業)の夫婦の場合に、分割割合50%だとすると、夫も妻も標準報酬は5,000万円となり、これに基づいて計算された老齢厚生年金を受給することになります。年金分割制度がなければ、妻の老齢厚生年金はゼロとなるところです。
年金分割の割合は、合意ができる場合には、当事者の合意によって、合意ができない場合には、調停、裁判によって決めることとなります。

年金分割の請求期間について

年金分割請求ができるのは、原則として離婚してから2年間ですので、この期間を経過しないようにご注意ください。

年金分割のポイント

  • 厚生年金の一部を当事者間で分割することができる。
  • 婚姻期間中の標準報酬が多い方から少ない方に対して、標準報酬が分割される。
  • 請求期間は離婚してから2年間。

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