警察のDNA型記録保管 立法化が必要
1 名古屋地裁の画期的な判決
名古屋市内の男性が2016年、暴行容疑で逮捕、起訴され、DNA型、指紋、顔写真を採取、撮影されましたが、2018年に無罪が確定しました。
しかし、その後も、警察はDNA型データなどを保有し続けたため、男性は、名古屋地裁に訴訟提起し、プライバシー侵害であるとして、抹消を求めていました。
2022年1月18日、名古屋地裁は、保管を続ける必要性は示されていないとして、国に抹消するよう命じる画期的判決を出しました。
2 警察によるDNA型データ保管の現状
2005年に運用が始まったデータベースに登録されたDNA型は、2020年で約141万件になっていて、近年は毎年10数万件ずつ登録されています。
DNA型のデータベースの運用方法は、国家公安委員会規則で定められていて、抹消については、対象者が死亡したときか保管の必要性がなくなったときに抹消するとされています。しかし、それでは警察が抹消するかを判断することになり、恣意的な運用につながるおそれがあります。
また、DNA型の登録を重大な犯罪に限るなどの限定がないことなども問題です。
3 厳格な立法化の必要性
欧米では、DNA型データベースに関する法整備が進んでいます。例えば、カナダでは保管対象を殺人や性的暴行など指定した犯罪に限っています。また、無罪判決の場合、ドイツの刑事訴訟法は、破棄されなければならないと定めています。
識別精度が高くなったDNA型の鑑定は、犯罪の捜査に有用で、冤罪を防止するために役立ちます。しかし、警察による個人情報の収集、利用は、プライバシーを侵害し、市民の監視にもつながります。
今回の判決を契機に、DNA型のデータベースの運用方法について、国家公安員会規則という内規ではなく、国会で審議の上、法律で厳格に定めるべきと考えます。
弁護士 篠原宏二(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)