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入管収容女性死亡事件、なにが問題か

2021年11月19日

 2021年3月、在留期限を徒過して名古屋入管に収容されていたスリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんが、体調不良の末死亡する痛ましい事件が起きました。入管庁による調査は不十分であるとして、遺族が収容中のすべてのビデオの開示と真相究明を求めています。
 実は、入管収容中の病死・自死事件は、ウィシュマさんが初めてではなく、1997年以降少なくとも20件発生しています。背景には、入管法が、在留資格がないなどで退去強制の理由がある外国人について、逃亡の可能性の有無等にかかわらず、入管の判断のみで無期限に収容することを認めているという制度上の問題があります。
 犯罪事件による逮捕・勾留は、逃亡や証拠隠滅のおそれなどにより身体拘束の必要性が認められるとして、裁判官が令状を発付した場合にしかできません。また、逮捕・勾留には明確に期限が定められています。それとの比較で考えても、入管の収容は人権侵害の度合いが強く、日本に家族がいる、難民で祖国に帰れないなど、様々な理由で送還に応じない人を身体的・精神的に追い詰め、送還に応じることを強要するための手段として使われている実態があります。収容者に対する医療も甚だ不十分です。国連人権理事会恣意的拘禁に関する作業部会も、日本の入管収容を国際人権条約が禁じる「恣意的拘禁」に当たるとして非難しています。
 このような悲劇が再び起きないようにするためには、ウィシュマさん死亡の真相が入管から独立した第三者組織によって解明され、効果的な再発防止策が実施される必要があります。より根本的には、入管収容について、令状審査や期限を定めるなどの入管法の抜本改正も必要です。今までは、社会の外国人差別・無関心によってこのような入管法や入管収容が許容されてきました。しかし、これはまぎれもなく日本社会の問題です。ウィシュマさんの犠牲を決して無駄にしない、社会の取り組みが求められています。

弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
(「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)

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