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成年後見制度について

2021年11月01日

 人は老いると認知の能力が低下していき、意思決定や財産の管理ができなくなることがあります。入所する介護施設を選ぶことができなくなったり、銀行で預金を引き出すことができなくなったり、買い物をして支払いをすることができなくなったりします。
 そのような場合、裁判所に後見等の開始を申立てることにより、成年後見人等が選任されることになります。成年後見人には、親族が選任されることがありますし、弁護士や司法書士などの専門職が選任される場合もあります。

 成年後見人に選任されると、認知の能力が低下した成年被後見人の方の財産を管理し、身上の監護をしていくことになります。
 財産管理については、預貯金や不動産などの資産、借入などの負債の管理、年金、家賃収入などの収入の管理、施設利用料、保険料、税金、家賃、光熱費などの支出の管理などをします。具体的には、銀行に成年後見の届出をし、施設利用料の口座振替の手続をしたりします。自宅の古家が空き家となり朽ちていて、草木が繁殖して、近隣にも迷惑をかける危険があるような場合に、その空き家の売却などをすることもあります。
 身上監護については、医療、介護に関する契約をしたり、住居に関する契約をしたり、衣食に関する契約(生活用品等の売買契約)をしたりします。具体的には、成年被後見人の方が骨折をされたような場合に、医療機関に入院の手続をとり、その後施設入所となった場合には、入所する施設を選び、契約をしたりします。医療機関で行われる、終末医療の選択に関する医師などのカンファレンスに参加することもあります。
 ただし、買い物などの家事労働や外出の付添などの事実行為は、成年後見人の業務には含まれません。

 私もこれまで何件か後見業務を行ってきました。
 私が行ってきた業務では、ある成年被後見人の方で身寄りのない方の市営住宅の退去手続を行ったこともありました。その方は、内縁の妻と市営住宅で生活をしていたのですが、最初に内縁の妻の認知能力が低下して施設に入所し、その後、その方も認知能力が低下し、施設に入ることになりました。そこで、市営住宅を退去することになったのですが、居室には、その方の所有物と内縁の妻の物があり、それを整理する必要がありました。内縁の妻の親族と、貴重品や大切な物がないかを確認し、不要な物を処分し、退去をしました。

 これまでいろいろな経験をされてきた方のサポートをすることはやりがいを感じます。弁護士も研修などで研鑽を重ね、よりよいサポートをすることができればと思います。

弁護士 篠原宏二(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)

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