性暴力のない社会をめざして
いきなりですが、相手の同意のない性的行為を「性暴力」といいます。刑法に触れれば性犯罪ですが、犯罪と認定されなくても性暴力は許されません。
性暴力は恋人間でも夫婦間でもありえます。内閣府の調査では女性の13人に一人が性暴力を受けたことがあると回答しているほどに、世の中は性暴力に満ちあふれています
そんな中、愛知県弁護士会では、2020年11月28日、「『ほとんどない』ことにされてきた性暴力 ~実態,そしてこれから~」というタイトルで、ライターの小川たまかさんの講演会を実施しました。
2017年の刑法改正によって、男性も、やっといわゆる「強姦罪」の被害者になれるようになりましたが、性犯罪に関しては他にも議論すべきことが山積みです。しかし、2017年刑法改正以降も性暴力に対する一般の認識は変わらず、財務事務次官による女性記者へのセクハラ発言や、有名大学の学生による集団レイプ事件、性犯罪での無罪判決(地裁)が続くなど、性暴力による重篤な被害が次々と発覚していることなどを指摘され、現在進行中の刑法改正への期待を語られました。
これまで性被害は「人にいえないほど辛い」ために被害者が声をあげられず、それをよいことに社会は、被害自体をなかったことにしてきたという指摘には感じるところがありました。ですので、この講演を聞いてしまったら、アピールせずにはいられません。
性暴力がいかに被害者の尊厳を傷つけるものであるのかは、すべての人がきちんと知るべきで、不正確で興味本位なネット情報に踊らされないように、きちんとした知識を身につけるための教育や啓蒙が必要です。
そして、性暴力というと別世界の話に感じられる方が多いでしょうけれど、実は性的同意は自分たちの問題だと知ってほしいのです。基本は相手への愛であり、リスペクトです。
私は多くの離婚問題を扱ってきましたが、離婚の裏には性の不一致が隠れていることがほとんどです。日常の中で、相互に相手の立場を尊重することが大切だと思う所以です。多くの人にもっと身近な問題として性的同意について考えていただけたら、社会全体がもっと健全で幸せなものになると確信しています。
弁護士 山内益恵(名古屋北法律事務所) (2020年12月「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)