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学術会議会員の任命問題

2021年01月18日

 菅首相が6名の日本学術会議会員の任命を拒否しました。学術会議が推薦した委員の任命を拒否したことはこれまでありません。学問の自由(憲法23条)には、真理を探求するために、特に政治権力からの学問への介入・干渉を防ぐことが必要とされます。そのため、学術会議と言う学者集団の人事に権力者である内閣総理大臣が介入したことは、学問の自由を侵害するものなのです。
 日本以外の憲法で学問の自由が明文で定められている憲法は珍しいです。他国では、思想信条の自由の一環として保障されるとしています。日本国憲法で学問の自由が明文で定められたのは、戦前の滝川事件(京大法学部教授瀧川幸辰の刑法学説をマルクス主義的であると批判され、休職処分,著書の発禁処分をうける学問弾圧事件)などの学問弾圧がなされたためでした。
 戦前の歴史的経験に対する反省から生まれた学問の自由である以上、その侵害に対しては敏感になる必要があります。もし、このような介入を許しては、政府の政策に迎合的な学者ばかりが残ったり、注目されたりすることになりかねません。
 そもそも、学術会議会員は、会内の推薦制から内閣総理大臣の任命制へと移った歴史的経緯があります。その時の中曽根首相は、形式的任命であると明言し、事実、これまでそのような形で運用されてきました。菅首相は、そのような国会での説明、長年の運用を変更したうえ、その理由すら明確に説明しようとしません。国民が選んだ議員のいる国会で説明したことを簡単に翻したことは、国民を軽視する行動にほかなりません。今は生活に直接関係しない問題でもいずれ生活にかかわる重要問題で同じ手段を使いかねません。国民を舐めている総理大臣にいつまでも国政を任せるべきではないでしょう。

弁護士 白川秀之(名古屋北法律事務所)
(2020年11月に「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)

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