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法務局が自筆遺言書を預かってくれるようになりました

2021年01月05日

  相続に関する法律が多くの点で改正され、2019年1月から順次施行されてきましたが、最後に残った、法務局による自筆証書遺言書保管制度(以下「保管制度」)が2020年7月10日に施行されて、これで全てそろったことになります。この制度の概要をご説明します。

保管制度のメリットは?

 遺言書というと自筆遺言書と遺言公正証書の二種類が代表的ですが、自筆遺言書の場合、本文部分は全て自筆であること等の形式的要件を満たしていることが必要ですし、紛失や破棄・改ざんといった危険性があることに加えて、亡くなった場合には裁判所での検認という面倒な手続きが不可欠です。

 こういった不都合や不便さに対して、保管制度を利用すれば、法務局で形式的要件のチェックをしてもらえる、紛失の恐れがない、検認手続が不要、通知制度を利用すれば誰にも言ってなくても見つけてもらえる、といったメリットがありますので、今後徐々に普及していくものと思われます。

どんな風にして預けるの?

 具体的には、自筆遺言書とともに保管申請書や添付書類を準備して、予約した上で法務局の窓口に行き手続きをします。このとき手続きをする法務局は、どこでも良いというわけではなく、遺言者の住所地、本籍地または所有する不動産所在地を管轄する法務局に限られます。

 注意すべきは、白い紙でないとダメとか、周囲に余白を空けるとか、遺言書の体裁がいくつか決まっていることです。一度は法務局に相談に行くか、法務局のホームページでよく研究してからにした方が良いと思います。もちろん当事務所に相談に来てもらえば詳しくご説明します。

 さらに来年度に予定されている「死亡時通知」という仕組みを利用すれば、自分が死んだ場合、保管申請時に決めておいた人(一人だけ)に自動的に通知が行くようにできるので、遺言書の存在を誰にも知らせずにおくこともできます。通知の相手は相続人、受遺者、遺言執行者が想定されています。

相続人はどうする?

 相続人や受遺者は、遺言者が死亡するまでは中身を知ることはできませんし、あるかどうかを確認することもできません。遺言者が亡くなって初めて、存否の確認や内容の閲覧などをすることができます。この場合にも、一人だけ抜け駆け的に見ることができないように、一人が閲覧したら、他の相続人全員に通知が行く仕組みとなっています。

 このように、保管制度は色々な点で、これまで自筆証書遺言書の不便な点を補うものとなっていますので、多くの人が遺言書を作成するきっかけになれば良いと思います。

弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)
(2020年12月「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)

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