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【交通事故】紛争処理機構への不服申請が認められた事案

2020年05月07日

不当な後遺障害等級認定

 Aさんは、外出先から、自転車で自宅へ向かっていたとき、前方不注意で交差点に進入してきた自動車に、衝突されました。その事故により、Aさんは、右脳を挫傷し、意識不明となり、病院に救急搬送されました。集中治療の結果、意識を回復し、その後退院し、治療を続けましたが、高次脳機能障害の後遺障害が残ってしまいました。

 Aさんから損害賠償請求の依頼を受け、自賠責保険会社に対して、後遺障害についての事前認定の請求をしました。ところが、後遺障害の認定をする損害保険料率算出機構は、高次脳機能障害が残存していることについては9級10号の後遺障害と判断したものの、Aさんには、左後頭葉脳動脈奇形の手術歴がありその手術後の痕跡が認められるとして、既存の障害として、12級13号の神経系統の障害があると判断しました。

そのような判断がされると、9級10号として認められる損害額から、12級13号の損害額として認められる金額が控除されてしまうことになります。

 しかし、Aさんには脳動脈奇形の手術痕はありましたが、それにより、認知、情緒、行動障害などの神経症状は生じていませんでした。12級13号は、神経症状がある場合に認定されるものであり、損害保険料率算出機構の既存障害についての認定は不当なものでした。

紛争処理機構への不服申請

 そのため、まず、自賠責保険会社に対して、異議申立てを行いました。異議申立てに際しては、脳動静脈奇形による手術痕により、神経症状は出ていなかったとの医師の意見書も提出しました。

 しかし、損害保険料率算出機構は、異議申立てを認めず、再び、既存の障害が認められるとの認定をしました。

 そこで、中立な立場で審査をすることが期待できる、紛争処理機構へ不服の申請をしました。

 申請においては、既存障害の認定が不当であるとの理由を丁寧に書面に記載しました。

不服申請を認める判断

 紛争処理機構は、申請理由を認め、既存障害にはあたらないとの審判を下しました。

 そして、それをもとに、保険会社と損害賠償額の交渉をし、12級13号の損害額として認められる金額を控除することなしに、和解をすることができました。

 交通事故における損害賠償請求については、迅速かつ適切な処理の必要性から、種々の紛争処理のためのADR(裁判外紛争処理手続)が設けられています。

 本件は、提出資料から適切に判断すれば、加重障害は認められないと考えられる事案でした。

 訴訟によるとどうしても解決までの日数がかかってしまいますので、事案の性質により、ADRの利用を選択したほうがいい場合があります。本件ではADRを活用したことにより、迅速な解決が可能となったと思います。

 2020年5月7日                                 弁護士篠原宏二

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