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「表現の不自由展・その後」 中止事件から表現の自由を考える②

2019年11月19日

 あいちトリエンナーレ2019は10月14日で閉幕しました。皆さん、見に行かれたでしょうか。今年の一番の話題は、不本意ではありますが「表現の不自由展・その後」をめぐる動きだったのではないでしょうか。開幕3日で展示が中止された不自由展が、仮処分申立という裁判手続きを経て、10月8日に再開されました。

★仮処分申立

 仮処分申立というのは、判決が出るのを待っていては(通常、第一審判決までに1年以上はかかる)重大な被害が生じる恐れがあるなど、緊急に結論を出す必要がある事案について、「仮の処分」として、短期間で判決と同様の結論を出す手続きです。今回の場合、10月14日で閉会してしまうという時間的制約がある中で、緊急に結論を出す必要がありましたので、この手続を利用しました。

 仮処分の場合、公開の法廷は開かれず、非公開の「審尋」という手続で双方の意見を戦わせます。今回のケースでは、裁判所は申立後すぐに2回の審尋期日を入れて、約2週間で審理を終えて決定を出そうとしていました。急ぎの時に使われる仮処分手続きでもこれほど迅速に行われることはあまりありません。やはり裁判所もこの事件の重大性と社会的な注目度合いを考えたからでしょう。

 2回目の審尋後、追加で3回目の審尋が9月30日に入れられて、いよいよこれで決定が出されるというタイミングで、大村知事から再開に向けた条件が示され、急転直下和解成立、再開に向けての協議開始が約束されました。そして協議の結果、冒頭で述べたように10月8日に不自由展が再開されました。

★今回、一度中止された企画展を再開させたという点では貴重な成果だったとも言えますが、8月4日から10月7日までの65日間、不自由展は閉鎖されましたし、再開されたと言っても抽選制となって観覧希望者の1割程度の人たちしか見ることができないという不充分な形での再開でした。

 そしてその後も各地で同様の展示への抑圧が続いていることを考えると、展示中止に追い込んだ者たちを喜ばせてしまったことは間違いがありません。

 このようなことが2度と起こらないよう、市民の力で監視していくことが必要だと思います。

                                                                           以上

  弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)

(2019年11月「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)

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