【労働事件解決報告】公務災害について不服申立が認められる
事案の概要
Mさん(50才)はある県の納税事務所に勤めています。勤務中、道をはさんで向かい側の別館に資料を届けようとして、横断歩道を渡ろうとしたところ、脇見運転の車にひかれてしまいました。上腕骨を骨折する傷害を負い、その後、治療を続けましたが、痛みなどの後遺症が残ってしまいました。
交通事故の加害者との関係では、保険会社による12級の後遺障害の認定がされ示談をしました。その後、公務中の事故でもあるため、後遺症が残ったことについて、地方公務員災害補償基金に対し、公務災害として障害補償一時金の請求をしたところ、後遺症が認められず不支給とするという決定がされてしまいました。Mさんは、到底納得することできず、相談に来られ、公務災害についての不服申立である審査請求をすることにしました。
審査請求による不服申立
Mさんから事情を聞いたところ、基金の担当者の調査がいいかげんだったとのことでした。そこで、補償基金に対して、個人情報の開示請求を行い、調査票などを取り寄せたところ、調査票は、Mさんの言うとおり、Mさんからの聞き取りなどが不十分と考えられるものでした。
そのため、審査請求においては、Mさんの後遺症の症状やその後遺症による仕事などへの支障を丁寧に主張していくとともに、調査票の記載が不十分であることを指摘しました。
不服申立を認める裁決
裁決は、障害補償一時金の不支給決定を取り消すというもので、不服申立が認められました。
公の機関が行った処分についても、妥当でない処分に対しては、あきらめず、適切に資料を入手し、丁寧に主張していくことが大切だと思える事案でした。
弁護士 篠 原 宏 二