スポーツと法
世間では、日本大学アメフト部の悪質タックル問題が話題となっています。タックルをした選手まで記者会見をする事態に発展しましたが、選手と前監督の言い分とは食い違っており、日本大学の対応も問題となっています。
そんな話題に関連して、スポーツと法律について考えてみたいと思います。
スポーツには怪我がつきものですが、協議中に選手が負傷をした場合には、法律上の責任はどのようになるでしょうか。一般的には、誰かに怪我を追わせるような有形力の行使は暴行罪になりますし、その結果、負傷をすれば傷害罪が成立します。しかし、スポーツ競技中の出来事であれば、このような責任は問われないことが原則です。形式的には犯罪行為は成立しますが、刑法35条の「正当業務行為」として違法性がなくなるからです。
ただ、スポーツ競技中だからといって、すべての行為が合法となるわけではなく、競技のルールを順守していたか、被害者が危険を承諾していたかなどの点から、社会的に相当な行為と言えるかどうかを総合的に判断することになります。
今回のケースでいえば、選手が記者会見で「指示内容が怪我をさせる意味だと認識していた」と発言していることから、スポーツのルールの範疇を超えて、故意に怪我をさせる意図があったと考えられます。そうすると、違法性がなくならない可能性が高いと思われます。もっとも、実際に刑事事件に発展するかどうかについては、被害者側の被害感情等も考慮されるでしょうから、必ず刑事事件として起訴されるというわけではありません。
他方で、選手の記者会見で述べられていたように、具体的な指示はコーチや監督から受けていたということを前提とすれば、監督にも共犯関係が成立する可能性がありますが、監督側の言い分も異なるため、より詳細な事実関係を明らかにしていく必要があると感じます。
弁護士 加藤悠史 (名古屋北法律事務所)
(2018年7月「年金者しんぶん」へ寄稿した原稿を転載しています)