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働き方改革について

2018年06月12日

 1月から通常国会が始まりました。今国会では働き方改革法案が大きな争点となっています。多様な働き方を認めたり、女性の社会進出を推進したりすることは大事なことです。しかし、政府の考えている働き方改革は、このような内容になっているのでしょうか。結論的には、多くの問題を含んだ法案となっています。
 一つ目は、過労死の問題です。昨年の電通事件(2017年に大きく取り上げられましたが、電通で働いていた高橋まつりさんが過労自死されたのは2015年です)など、過労死は日本の社会問題となっており、これを防ぐために、労働時間の上限を規制する必要があります。現在は、罰則規定などはなく、労働時間は無制限という状況です。法案では、労働時間の上限について罰則付きの規制を設けてはいます。ここまではよかったのですが、規制には沢山の例外があります。この例外がわかりにくく、休日労働も合わせると、最大1ヶ月100時間、年間960時間(ひと月平均80時間の規程があるため)の時間外労働を法律が認めていることになっています。これは現在の行政が定めた過労死基準に達するものとなっています。つまり、この法律が認められると、法律が過労死を認めることになるわけです。人の命の尊さを考えていない法案は、働き方改革といえるものではありません。
 二つ目には、残業代の問題です。高度プロフェッショナル制度という、要件を満たせば、残業代を払わなくてもいいという制度を導入しようとしています。政府や一部メディアは、「働いた時間ではなく成果で評価する」といっていますが、これは誤りです。成果主義の賃金は、現在でも導入している企業はあります。そうではなくて、残業代を払わなくてもいい労働者をつくる制度なのです。政府は、一定の年収以上(1075万円を予定している)の労働者だけが対象だといっていますが、他方で、「小さく産んで大きく育てる」とも公言しています(塩崎厚生労働大臣(2015年当時))。当初は高収入の労働者だけが対象ですが、いずれは、多くの労働者を対象とする制度としようとしています。
こうした多くの問題を含んだ働き方改革法案は、働かせ方「改悪」と言うべきもので、一部メディアや政府の発言にごまかされずに、問題点を見極めることが大切です。

弁護士 加藤悠史 (名古屋北法律事務所)

(2018年2月「年金者しんぶん」へ寄稿した原稿を転載しています)

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