残業代ゼロ・定額働かせ放題制度なんて許さない!
(1)報道では、「テキパキと効率よく仕事をこなせる人が定時に帰って基本給だけ、ダラダラ居残りしている人が残業代を取っていくのは不公平。成果に応じた賃金の支払をする新制度を作ろう」というふれこみで、「高度プロフェッショナル労働制度」なるものが作られようとしています。
しかし、この制度は実際には「成果に応じた賃金の支払をする」という内容では全くなく(そういう意味で報道はひどい誤報であって)、実態としては「要件」を満たす労働者に対しては割増賃金を支払わなくてよい、基本給だけでいくらでも働かせてよい、という「残業代ゼロ法」「定額働かせ放題制度」であり、絶対に作らせてはならない制度です。
(2)今のところ、政府が示している「要件」は、「年収1075万円以上の高度専門職」とされています。それなら多くの労働者には関係ないでしょうか?そんなことはありません。
(3)経団連は、残業代ゼロの対象労働者を「年収400万円以上」にすべきと主張しています。ターゲットはごく一部の高収入の労働者ではなく、大多数の「普通の労働者」なのです。塩崎厚労大臣も、企業経営者らとの朝食会で「小さく産んで大きく育てる」などと発言しており、「年収1075万円以上」と言いながら後から年収要件をどんどん下げていく、という本音は明らかです。
そもそも、「定額働かせ放題制度」は、追加で業務を指示することを禁止していません。残業している労働者は、「ダラダラ」しているわけではなく、業務量が多すぎる(人件費削減で人手不足のことも多い)ために「定時なので帰ります」と言えない状態にあります。この業務量の多さ(人手不足)を解消しないでおいて、残業時間はそのままで、残業代だけがゼロになるという、とんでもない不正義を行おうというのです。
さらに、塩崎厚労大臣の答弁によれば、「有期労働者」「雇用契約期間が1年未満の労働者」まで対象にされるといいます。不安定な立場にある有期労働者が業務指示を拒んで定時に帰るのは一層困難です。
(5)そもそも残業代の制度は、人類の知恵です。経営者が労働者を文字通り「死ぬまで」働かせてきた反省に立って、人間を長時間こき使うことにある種のペナルティを課していうるのです。人間らしい生活を守るため、定額働かせ放題なんて許さないという声を強めていきましょう。
弁護士 矢﨑暁子
(「新婦人きた」へ寄稿)