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「遺言」(2)遺言能力

2015年07月14日

 法律上、15歳に達した者は誰でも遺言を書くことができるとされています(民法961条)。しかし、遺言をする時においてその能力を有していなければならない、とも書かれています(963条)。

 ここでいう「能力」とは、自ら判断して意思を表明できる力、という程度の意味で、法律の世界では「意思能力」とも呼ばれます。

 よく問題となるのは、認知症を患っている方がこの「意思能力」を有しているか、その方の書いた遺言が有効かどうかということです。

 認知症といっても、その進行の程度は様々で、軽度の方であれば意思能力が認められることは十分あります。また、一時期、意思能力が完全に欠けてしまう状況に至ったとしても、その後能力が回復することだってあり得ます。

 結局はケースバイケースですので、現在の症状について、お医者さんの意見をよく聞く必要があります。お医者さんが行う「長谷川式」と呼ばれる知能テストの結果は、裁判などでもよく参考にされます。

 また、書こうとする遺言の内容によっても、求められる能力の程度は異なります。例えば、「長男に全財産を相続させる」という単純な内容であれば、それほど高い能力は要求されないでしょう。

 意思能力が低下し、成年後見人が付いているという方も見えます。こうした方は一切遺言が書けないかというとそうではなく、一時的に能力が回復した時に、二人以上の医師が立ち会うという厳格な要件の下で、遺言を書くことができます(民法973条)

弁護士 鈴木哲郎

(「商工新聞」 名古屋北部民商へ寄稿)

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