国連自由権規約委員会からの秘密保護法、ヘイトスピーチなどについて勧告
日本の国際自由権規約の遵守状況を審査していた国連の自由権規約委員会は、2014年7月24日に日本に対する最終見解を公表しました。秘密保護法、ヘイトスピーチなど近時の人権問題についても、政府への勧告が出されています。
特定秘密保護法について委員会は、表現の自由を定めた規約19条に基づき、「秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎に規定されている点、指定について抽象的要件しか規定されていない点、およびジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点」について懸念を表明しました。そして、秘密指定には厳格な定義が必要であること、制約が必要最小限度のものでなければならないこと、ジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰から除外されるべきことを政府に勧告しました。
また、朝鮮・韓国人、中国人および部落民などへの憎悪と差別を扇動するヘイトスピーチに対しては、現行の刑法・民法では保護が不十分であるとして、「差別、敵意あるいは暴力の扇動となる人種的優越あるいは憎悪を唱えるすべての宣伝、デモを禁止するべきである」「人種主義者の攻撃を防止し、加害者とされるものが徹底的に捜査され、起訴され、有罪判決を受けた場合は適切な制裁を持って処罰されることを保証される措置を取るべきである」と勧告しました。
今回の勧告が出た後、自由権規約委員会の最終見解には、法的拘束力(=強制力)がないことが盛んに報道されています。しかし、だからといって、委員会の最終見解を軽視してもよいかのような理解は誤っています。委員会は、国連人権条約にもとづく条約機関として、自由権規約の解釈に関しては最も権威ある機関であり、その解釈は規約の遵守状況の判断において最も重視されるべきだからです。今後は、今回の勧告を実現するよう政府に働きかけることが求められています。
弁護士 裵明玉
(「年金者しんぶん」へ寄稿)