弓矢人権裁判について
怒りがこみ上げる事件です。事件の概要は次のようなものでした。
三重県の高校教師の弓矢先生は、居住地の町内会を独立させる取り組みを行っていましたが、その過程で隣人宅を訪問した際、「お嬢さんの将来のためにいいですしね」と発言した。隣人から発言が不適切ではないかと指摘された弓矢さんは、すぐにその場で謝罪した。
ところが、その後、その発言を知った、三重県教育委員会や同和推進教員(三重県では同和行政のためと称して、殆ど授業を行わず、もっぱら同和対策を行うための教員が各校に配置されている)、部落解放同盟(解同といいます)、「部落差別発言」として問題を拡大し、熾烈な追及と糾弾を行いました。11月5日には、松阪市役所で400名の「糾弾会」が行われ、弓矢先生に対して、まさに集団的吊し上げとも言うべき追及を行いました。驚くことに、同糾弾会には、三重県教育委員会事務局及び教職員が224名参加しました(そのうち12名は出張、11名は研修、82名は年休扱い)。また、弓矢先生は、居住地でも、自分の生い立ち、経歴、「差別心」が生まれた経過等を「吐露」させられた反省文(10回以上も書き直しさせられたもの)をばらまかれ、一件一件謝罪に回らされました。
弓矢さんは、県教委と解同の追及と糾弾の中で、内心の自由が侵害され、プライバシーと名誉が侵害され、その人格権を侵害されたとして、解同幹部、三重県、松阪市等を被告として損害賠償請求訴訟を提起し、一審の三重地裁は、三重県に対し、解同の糾弾会への参加を弓矢さんに強要したことは違法と判断し、220万円の慰謝料の支払いを命じました。しかし、他の解同幹部等については、その責任を認めませんでした。同判決を不服として、原告、被告三重県の双方が控訴し、名古屋高裁で審理が続けられています。
弓矢さんの発言が適切ではなかったでしょう。しかし、私人間の私的な会話を理由に、何故にここまで人格の蹂躙が行われなければならないのか。社会運動、政治と教育を混同し、政治的中立を破って解同と連携する三重県の「同和教育」なるものの異常性。こうした問題点を徹底的に追及し、控訴審での勝利をめざす決意です。
弁護士 長谷川一裕