離婚と離婚にまつわるお金の話
離婚は年に29万組!
厚生労働省人口動態統計によれば、2002年の離婚件数は約29万2000件。わが国の離婚のほとんどは、協議離婚です。これは夫婦の話合いで、離婚をすることと、未成年の子どもがいればその子の親権者を合意し、役所に届け出れば離婚成立、というもので、こんなに簡単に離婚できる法制度は珍しいそうです。相手が離婚を承知しない場合などは、家庭裁判所を利用することになりますが、その場合でも調停前置主義といって、まずは2人の話合いの場である調停を利用しなさい、というのが法律の立場です。調停が不調に終わって、初めて審判や訴訟となるのです。最近の離婚は、若い世代の離婚率の増加と、中高年夫婦のいわゆる熟年離婚の増加が特徴です。
離婚にあたって一番考えなければならないのは、子どもの問題と離婚後の生計をどう立てていくかだと思います。そこで、ここではお金の問題を考えてみたいと思います。
離婚給付
(1)離婚の際に問題となるお金には、よく耳にする慰謝料のほか、財産分与、養育費・婚姻費用分担等があります。しかし、現実には経済力のない人、とくに専業主婦だった女性にとって離婚という選択は厳しいものです。
(2)まず養育費は未成熟の子どもの監護教育費、婚姻費用は婚姻中の生活費のことで、たとえ別居中でも、収入が多い側の養育費や婚姻費用分担義務は消えません。
(3)慰謝料というのは、精神的損害に対する賠償金のことです。
慰謝料額は、相手方の有責性、婚姻生活の実情、当事者の社会的地位等様々な要素で判断されるので一概にはいえませんが、訴訟をするのであれば、訴える側がこれらの事情を裁判所に主張して証拠を出していかなければならず、かなりたいへんな作業です。
(4)これに対して財産分与は、夫婦が婚姻中に作ってきた財産(名義は問いません)を、夫婦で清算して分配するもので、結婚前にそれぞれが有していた財産などは対象とはなりませんが、将来支給される予定の相手の退職金や年金も、支給されることがある程度確実に見込まれる場合であれば、分割の対象となりえます。
財産の分配に当たっては、その財産を得る際の事情(清算的要素)や、離婚後の生活保障といった扶養的要素、それに慰謝料的要素を考慮することがあり、専業主婦も半分に近い割合で分与が認められることも多いようです。
ですから、財産が多くて婚姻期間が長い夫婦では支払額が何千万円というケースもあります。しかし、平成14年度の全家庭裁判所の離婚調停において離婚した夫婦約2万5千組のうち、財産分与の取り決めをしたのは全体の36%。しかもその中の4分の1は、100万円以下にすぎませんでした。
弁護士 山内益恵