高齢者の投資詐欺被害について
一人暮らしの高齢者が増える中、高齢者の老後資金を狙った投資詐欺が広がりを見せています。今回は、実際のケースをもとに、被害を防ぐ方法についてお話ししたいと思います。
70代中盤のAさんは、退職後マンションで一人暮らしをしていました。もの忘れが始まった矢先、勧誘員の訪問があり、株やFXなどに投資する匿名組合に、「年間6%の利益が出て毎月配当がある」「1千万円なら月6万円くらいになります」と勧誘されました。Aさんは、優しい語り口の年若い勧誘員をすっかり信用してしまい、退職金1千万円を渡してしまいました。
匿名組合契約は、匿名組合員が営業者の営業のために出資し、その営業から生じる利益の分配を受けることを約束する契約です。匿名組合契約では、出資金は営業者の財産になり、投資に失敗した場合も出資金の返還は保証されません。元本割れのリスクを隠して勧誘され、契約をしてしまった場合、匿名組合契約は、消費者契約法で取り消すことができます。
金融庁は、プロ向けファンドの勧誘業務について、一定の要件のもと、登録不要、届出のみで可として規制を緩和しており、Aさんが契約した商品もそのような商品でした。しかし、勧誘員は、プロ向けであることは隠して、金融庁の届出があるからと、Aさんを安心させていたのです。届出は金融庁の保証ではないことを知っておく必要があります。
Aさんの場合、お金を渡してすぐ発覚したことが幸いし、全額を取り戻すことができました。相談のきっかけは、女友達が話を聞いておかしいと思い法律事務所に連れてきたことでした。普段から地域の人間関係をしっかりと築いていたために、大事な資産を守ることができたのです。その後Aさんは、二度と同じ被害に遭わないように、財産管理契約を結びました。
元気なうちに財産を守るための対策を講じることが大切です。
以上
2014/4/1 弁護士 裵明玉(ぺみょんおく)
(「年金者しんぶん」へ寄稿)