秘密保護法の強行採決に寄せて
「秘密保護法の強行採決に寄せて」
去る12月6日、参議院で、秘密保護法修正案が強行採決され、秘密保護法が成立しました。同法案の採決を強行したことは、内容面・手続面いずれにおいても国民主権・民主主義の理念を踏みにじるものであり、到底容認されるものではありません。
◆秘密保護法の本質◆
この法案は、
- 行政機関の長が、防衛、外交、スパイ、テロにかかわる幅広い情報を”特定秘密”に指定して、「なにが秘密か」も秘密にする
- 特定秘密を市民・マスコミ、国会・裁判所からも隠す
- 特定秘密を取り扱う公務員や企業の従業員とその家族まで「適性評価」を通じて監視する
- 特定秘密の漏えいや、共謀・教唆・扇動などには重い刑罰を科す
というもの。
一部の官僚による情報の独占と操作を許し、報道の自由や市民の知る権利を侵害し、ひいては国民主権を形骸化させるおそれのある恐ろしい内容です。原発や集団的自衛権の行使など、国論を二分する重要問題について、正しい情報を求めることや、政府に反対する活動が、「犯罪」「テロ」として監視される事態になると、市民の分断は一層深刻なものとなります。このような社会は、権力者が上記のような政策を好き勝手に推し進めていくためには大変都合の良いものです。
◆多くの反対の声を無視した強行採決◆
この間、法案の危険性に気付いた広範な市民から反対の声が上がり、衆議院では、みんなの党及び日本維新の会が、与党との修正案に合意しました。しかし、その内容は、
1.秘密として指定できる期間を60年に延長し、「永久秘密」まで認め、
2.行政の最高責任者である内閣総理大臣の関与を認めるなど、秘密保護法の危険性をかえって増幅させるものでした。
しかも、衆議院では、この修正案についてはわずか数時間しか審議されないまま採決され、参議院でも、短時間の審議で採決が強行されました。参考人や公述人の多くが反対、もしくは慎重審議を求めたにもかかわらず、これらの意見が省みられることはありませんでした。
◆自由な社会も求めて、反対運動を続けましょう◆
秘密保護法の成立後も、日本弁護士連合会や自由法曹団などの法律家団体は、法律の廃止や問題点の克服に向けた取り組みを行っていくことを表明しています。自由な社会を守るために、引き続き、秘密保護法の内容面、成立までの手続面の問題点を明らかにし、廃案を求める反対運動の力を結集し続けることが求められています。
2013/12/10 弁護士 裵明玉(ぺみょんおく)
(「新婦人きた」へ寄稿)