中小企業と交通事故(2)−従業員が事故を起こした場合の会社の責任−
今回は、従業員が交通事故を起こしてしまった場合の会社の責任について考えてみましょう。
(1)使用者責任
一般に、交通事故の加害者は、被害者に対して不法行為責任(民法709条)を負うことになります。そして、従業員がこの不法行為責任を負う場合に、その行為が会社の「事業の執行について」なされた時には、会社は「使用者責任」(民法715条)を負うとされています。
(2)運行供用者責任
さらに、人身事故の場合には、自動車損害賠償保障法(自賠法)3条が「運行供用者責任」というものを定めています。会社がこの「運行供用者」に当たる場合には、上記の使用者責任の成否を問うまでもなく、損害賠償責任を負います。
運行供用者に当たるか否かは、自動車の運行について支配を及ぼしているか(運行支配)、運行から利益を得ているか(運行利益)という観点から判断されます。
・従業員が業務中に社用車で事故を起こした場合
会社の運行支配、運行利益はまず認められる(=会社が責任を負わなければならない)でしょう。
・社用車を無断で私用に使っていた場合
このような場合まで会社が責任を負うはずがないと思われるかもしれませんが、事情によっては運行支配、運行利益が認められてしまいます。従業員が社用車を持ち出すに至った事情や私用運転と業務の関連性、平素の運転状況などの事情を総合考慮して判断されます。
・マイカー通勤
マイカー通勤を禁止していたのに従業員が無視して通勤途中に事故を起こしたということであれば、会社の運行支配、運行利益は否定されるのが普通です。逆に、(あまり考えられませんが)マイカー通勤を指示、奨励していたり、マイカーを業務にも利用していたような場合には、会社が責任を負うことはあり得るでしょう。
2013/09/11 弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)