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派遣法の問題

2008年01月25日

派遣法改正の見送り

 労働者派遣法の見直しを検討してきた厚生労働省の労働政策審議会労働力需給制度部会は二十五日、法改正を見送る中間報告をまとめ、派遣法改正の国会提案が見送られました。この問題について、企業、経営者は派遣法をもっと使いやすくするべと言う意見を出し、労働組合などはむしろ派遣法の範囲を狭くするべきだとします。派遣法改正についてこのような問題が生じるの化についてはどのような問題が存在するのでしょうか。

労働者供給事業の禁止

 職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)配下のとおり規定しています。

「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」

 労働法の基本原則の一つは、労働者を指揮監督するものが、労働基準法などの使用者としての責任を果たすことが原則です(直接雇用・間接雇用禁止)
どうしてこのような、原則が定められたのかは、労働者を指揮監督するものが使用者としての義務を果たさなくても良いとすると、労働者を酷使したり、労働者の権利を無視した行為を採ったり、使用者としての責任を免れることを防止しようとしたためです。

 戦前でも、工場法(労働基準法の前身)が普及し、最低の労働条件が法定されたり、健康保険加入が義務づけられるようになると、企業は、こうした使用者としての義務を回避するために、労働者供給業者から受入れる「間接雇用」の形態が広がったのです。このような中で、労働者は実際の労働先で酷使され、給与についてもピンハネするという状況が続いたのです。

 敗戦後、日本を占領した連合軍は、このような遅れた労働関係に驚き、その民主化と間接雇用の禁止=直接雇用を強く指示することになったのです。その結果として制定されたのが、職業安定法や労働基準法です。

 この職業安定法第44条は、原則的に労働者供給事業を禁止しました。労働者派遣についても、派遣法が成立する前は、違法であり、派遣法成立によって合法化されたのです。
派遣法改正に関する問題は職業安定法第44条を原則と考えるべきかどうかという点に帰着します。

労働者派遣とは

 労働者派遣においては派遣元と派遣先が労働者供給契約を締結して、派遣元は労働者供給契約により、派遣労働者を派遣先に派遣することになります。登録型派遣では派遣先が決まることで、派遣労働者が派遣元と労働契約を締結して、派遣先での指揮監督に服します。
例えば、派遣先から派遣労働者に来なくてもいいと言われて場合はどうなるででしょうか。この場合であっても、派遣先と派遣労働者は雇用契約を締結しているわけではないので、派遣先には派遣労働者を解雇することはできません。派遣先は派遣元に対して、労働者供給契約に基づいて、適切な派遣労働者を派遣するように求めることになるのです。派遣元は別の労働者を派遣することができますが、合理的な理由がない限りそれまで派遣していた派遣労働者を解雇することはできません。また、派遣先の要求が理不尽であったものの場合にはむしろ派遣先の要求を拒否することができるのです。
また、派遣労働者が派遣先においてセクハラを受けた場合はどうでしょうか。この場合には、派遣労働者は派遣先に対して改善を求めることができます(労働契約が成立していなくとも、派遣先には安全配慮義務があります)が、派遣先に対して、労働者供給契約に基づいて派遣先に抗議をしなければなりません。
法律的にはこのようになっており、派遣労働者の権利救済には派遣元が毅然とした態度を派遣先に取ることも必要になるのです。

労働者派遣の実情

 しかしながら、現実的には、派遣元は派遣先から契約を打ち切られるのを恐れて、派遣労働者の抗議を行うことはありません。むしろ、派遣先からの理不尽な要求を派遣労働者に転嫁することがほとんどなのです。
この背景には、労働者派遣と言った制度自体が労働者を人間と見るよりも、一種の商品と見るような考え方が背後にあるのではないかと思います。派遣法を使いやすくしようという流れは、職業安定法第44条で、労働者供給事業を禁止した歴史的な背景を無視することになるのではないかと思います。
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