労働(2) 整理解雇
(1)第2回は整理解雇について取り上げます。
リーマンショック以降の「派遣切り」が思い浮かぶように、企業の経営状況悪化を理由に「人員削減」として行われる解雇は、社会問題にも なっています。
この整理解雇についても、具体的事例にふれながら説明します。
(2)具体的事例
私は、プリント配線板等の製造販売業を営む会社に勤務していますが、同社は売上げの低下に伴う収益悪化を理由に、平成16年6月から7月にかけて、正社員であった私を含む21名 を解雇しました。
本件解雇の対象者は、人事考課成績の低い者から、管理職及び代替性の低い労働者と会社が考える者等を除外する形で選定されました。ま た、会社は本件解雇に先立って、役員報酬、管理職賃金の削減、百数十名いた有期雇用の臨時社員の46名までの削減等を行っていました。
会社の解雇は有効なのでしょうか?(アイレックス事件)
(3)会社の経営上の都合による解雇を整理解雇と呼びます。会社全体の経営不振だけでなく、工場や部門の閉鎖等によって人員削減を する必要が生じた場合にも行われます。
普通解雇や懲戒解雇は、労働者に非がある場合に行われる解雇ですが、整理解雇はそうした事情のない労働者を会社の事情 で解雇するものです。
そのため、労働者を解雇しなければならない必要性が高くなければなりません。非のない労働者に対する解雇である以上、 それが有効になるためのハードルは、他の解雇よりも高いのです。
裁判では、以下の4つの基準を用いて是非を判断しています。
1 人員削減の必要性
人員を減らす必要性がどの程度あるか。
2 解雇回避努力
解雇以外の方法、例えば希望退職の募集や新規採用の停止といった他の手段を検討したのか。例えば、会社の遊休資産処分員報酬の削減と いった方法で解雇を回避できるのであれば、解雇を避けるためまずそうした方法を採るべきだ、ということです。
3 人選の合理性
解雇の対象が公平で合理的な人選基準なのかをしたか。客観的な解雇基準をきちんと定めているかどうか、基準にしたがって人選をしている かどうかです。「経営悪化」に名を借りて、嫌いな労働者を追い出すこ とは許されないということです。
4 手続きの相当性
整理解雇がやむを得ないことを会社は労働組合・労働者に誠実に協議説明をしたか。事前協議を一切せずに解雇をするような場合は解雇が認められにくくなります。
以上の4個の基準について総合的に判断するというのが現在の実務です。
裁判所は、人員削減の必要性をゆるく考える反面、解雇回避努力義務について厳格に判断するようです。例えば退職の募集 は裁判所から重視される傾向にあります。
希望退職の募集を行っていない場合には、整理解雇が認められにくくなります。
2013/07/11 弁護士 矢﨑暁子
(ホウネットメールマガジンより転載)