中小企業と金融商品取引被害(3)
金融商品に関するトラブルの解決手段として、『金融ADR』という手続があるのをご存じですか?
これは、簡単に言うと、銀行などの金融事業者との和解に向けた話合いを、中立的な第三者に取り持ってもらって、スムーズな解決を目指すための手続です。
「ADR」というのは、「Alternative Dispute Resolution」の略称で、「裁判外紛争解決手続」と訳されています。裁判によらずに紛争の解決を目指すもので、住宅や医療など様々な分野で導入されていますが、平成22年10月から、この「金融ADR」がスタートしました。
金融ADRを受け付ける窓口としては、まず、その金融事業者が所属する業界団体(銀行の場合であれば全国銀行協会)の「指定紛争解決機関」があります。業界団体の機関とはいっても、国が指定と監督を行っており、中立性と公正さが確保されています。
しかし、たとえば信用金庫には、銀行のような指定紛争解決機関がありません。この場合には、弁護士会の紛争解決センターなどの「外部ADR機関」を活用することができます。
金融ADRでは、利用者保護の観点から、金融事業者に対し、
(1)手続に参加する義務(応諾義務)
(2)事実関係を説明し資料等を提出する義務(説明義務)
(3)あっせん委員から提示された最終的な解決案に応じる義務(受諾義務)
を課しています。
金融ADRのメリットには、裁判よりも早く、しかも柔軟な解決が期待できること、手続費用が軽減又は免除されることなどがあります。弁護士などを代理人に付ける必要もないので、金融商品に関するトラブルに悩まされている方は、ぜひ利用を検討してみると良いでしょう。
2013/04/30
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)