事業承継の大切さ、むずかしさ
事業承継とは
中小企業の事業承継問題が取り上げられる機会が増えています。高度成長期に創業した経営者たちが引退の世代を迎えていることが背景となっています。
事業承継に関する問題というと、相続税の問題と直結して理解する向きがありますが、これは税理士がこの問題を取り扱うことが多いことに由来していると思われます。しかし、民法や会社法等に関する法律知識と適切な対応こそが極めて重要なのです。
中小企業の場合には、経営者の個人資産が事業用資産に占める割合が高く、ある統計によると65%、株式会社の場合は68%が経営者の個人資産と言われています。
また、中小企業の場合、親子間、親族間で承継が行われる場合が多いと思われます。
従って、中小企業の事業承継という場合には、遺言や相続に関する法律知識と対策が不可欠となります。
事業承継対策のポイントは?
中小企業の経営を承継する際、最も大切なことは次の諸点です。
(1)事業用資産を後継者に集中させること
最も重要なのは、自社株です。最低でも議決権の過半数を後継者に集中させ、できれば3分の2以上を保有させることが望ましいとされています。事業用の土地建物が経営者個人所有の場合には、その承継も問題です。
(2)迅速性・円滑性・法的安定性
生きて動いている中小企業の承継については、とりわけこの点が大切です。経営者個人の預貯金や担保提供された不動産の承継についてトラブルになったりすると、銀行や取引先の会社に対する信用が損なわれることになりかねません。
従って、相続が開始した時に、円滑、スムーズに事業用資産の承継が行われるように、事前に手を打っておくことが大切です。
(3)後継者に対する配慮とともに、後継者以外の相続人に対する配慮を。
事業の発展に尽くした後継者、相続人にはそれなりの評価をしなければなりませんが、他方で、後継者以外の方への配慮も怠ってはいけません。相続開始後、相続人の間で後継者に対する反発が生じ紛争に発展すれば、事業の承継にとっても障害となります。