会社法について(第三回)定款自治について
1 定款とは
1 定款とは
前回までは、株式譲渡制限会社についてお話ししました。つまり現行の会社法のもとでは有限会社制度はなくなり、新たに有限会社を設立することができなくなりましたが、そのかわりに中小企業の実態に合わせ、株式譲渡制限会社の規定を充実させ、株式会社であっても定款を変更して組織を簡素化すること等が可能になったのでした。
ところで定款とは、なんでしょう。定款は、会社の組織活動の基本を定めた根本規範です。現行の会社法は、定款自治といって、定款によって会社の方針を会社自身がきめる場面を多く予定しています。
2 定款には、絶対に定めておかなければならない事項(絶対的記載事項)と定款に記載しなければ効力が生じない事項(相対的記載事項)、それ以外の任意的記載事項があります。
たとえば、絶対的記載事項は、会社の目的、商号、本店の所在地、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」などです。今回の改正で最低資本金制度が廃止されましたので、設立時の最低出資額さえ定款に記載しておけば、資本金1円のまま存続する会社を設立することができるようになりました。
相対的記載事項には、たとえば株式の譲渡制限や役員の任期の伸長、「会社が公告を行う方法」など多くのものがあります。「公告を行う方法」は官報、日刊紙、ホームページ等電子公告の3種類があり、その中から定款で定めることができます(定めがなければ官報になります)。
3 定款の経過処置
また今回の改正では、経過処置として、新法施行と同時に所要の変更がなされたものとみなされる事項がいくつか盛り込まれました。
たとえば監査役は本来会社の業務と会計の両方の監査を担当しますが、改正前の小会社(資本金1億円以下の会社)においては、とくに定款に定めがない場合、監査役は会計監査だけの定款の定めがあるものとみなされます。もし監査役に業務監査も依頼する場合には、定款変更が必要です(相対的記載事項)。
4 定款の認証と変更
会社を設立する際には、定款を作成し公証役場に持っていって公証人の認証を受け登記をします。認証手続きには、紙の定款だけでなく、電子定款の認証手続きもあります。これは印紙代節約のために利用されています。
定款は会社の根本に関わる重要な事項が記載されるものですから、その変更には株主総会の特別決議(持株会社では総社員の同意)などが厳格な要件をみたすことが必要ですが、定款変更自体には認証手続きは必要ありません。変更した事項が、法務局で登記すべき事項であれば、登記の変更申請をします。
ところで従前、変更した事項が登記事項でない場合に、複数の定款が存在してどれが最新のものかわからなくなることがありました。現行法では定款自治が広く認められた結果、このような事態から深刻な紛争に発展することが懸念されます。そこで定款を変更したときには、その都度公証人役場で確定日付をとっておくことが望ましいでしょう。