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高齢者・障がい者をサポートする制度(4)成年後見の効果 vol.2

2013年05月28日

 前回は、成年後見制度を利用した場合の効果について、契約の取消しと医療行為の同意についてお話ししました。

(成年後見の効果 vol.1はこちら↓)
http://www.kita-houritsu.com/?p=4939

 今回は成年被後見人の選挙権について、お話しします。

 現在、成年被後見人になると選挙権及び被選挙権を失うという制度になっています(公職選挙法11条1項1号)。この制度を違憲とする判決が、今年の3月14日、東京地裁で出されたことは、記憶に新しいことと思います。

 どうして成年被後見人になると選挙権を失うのでしょうか。政府は、「通常は政治参画を期待できない」などと説明してきました。しかし、成年後見制度で取り上げている判断能力は、あくまでも私的な財産の保護の観点に基づくものにすぎず、これを理由にして選挙権を一律に奪うというのは全く筋違いというほかありません。

 私たちは、例えば、一つの政策(脱原発、消費税増税阻止など)にだけ着目して投票することもできますし、もっといえば原発の構造や消費税増税の景気に与える影響などに詳しくなくても投票することができます。それは、自分たちの代表者を選ぶにあたって、どの観点にどのように着目するかは国民の自由だからです。もちろん、白票を投じることだって自由です。

 選挙権というのは、市民であることによる当然の権利です。何かが「できる」「できない」によって「市民」の範囲を制限していいのか、ということが問われなければなりません。

 かつての禁治産制度は、判断能力の低下した人の行動を制限し、「家」の財産の運営に参加させないという発想に基づいた制度でした。選挙権を奪い「国家」の運営に参加させない、という発想は、まさにこの禁治産制度に基づくものといえます。成年後見制度は、かつての禁治産制度から脱却し、自分らしく主体的な人生を尊重するという観点から新たに作られた制度です。選挙権喪失という制度は、古い制度の残滓であって、成年後見制度の理念にもそぐわないのです。

 今回の東京地裁判決を受けて、公選法の改正が急がれます。

2013/04/26 弁護士 矢崎暁子

(ホウネットメールマガジンより転載)

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