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中小企業と金融商品取引被害(1)

2013年05月08日

「為替デリバティブで中小企業倒産が増加」

 昨年の夏頃に、このような見出しのニュースが報じられました。「為替デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品により、多額の負債を抱えて経営難に陥る中小企業が続出しているという内容でした。

 為替デリバティブについて簡単に説明すると、「あらかじめ取り決めた為替レートで外貨を売買する契約を銀行と結んでおく」というものです。モノを輸入し、ドルなどの外貨で決済する場合、円安が進むと購入コストが増えます。このため例えば1ドル=100円で買う契約を銀行と結んでおけば、それ以上円安が進んでもコスト増にはなりません。逆に、円高が進み1ドル=80円となった場合は、輸入業者に20円分の損失が発生することになります。

 もともと為替デリバティブは、日々上下する為替相場によって業績変動が起きないようにするためのリスク回避商品でした。しかし、大手銀行は、円安が続けば利益を見込める運用商品として、外貨を必要としない中小企業にも販売先を広げていきました。

 事態が急転したのは、2008年秋のリーマンショックです。円高が急激に進み、毎月の決済のたびに損失が膨らむ企業が続出しました。この商品の恐ろしいところは、5年や10年単位の長期契約にもかかわらず原則として途中解約ができず、解約する場合には巨額の違約金を支払わなければならないことです。

 こうした金融商品取引による被害は、中小企業の経営を瞬く間に悪化させ、果ては倒産に至るということも少なくありません。これから数回にわたって、中小企業に関わる金融商品取引被害の中身と、その救済策について解説していきます。

2013/02/26

弁護士 鈴木哲郎

(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)

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