勤務時間中のメール利用
労働者が勤務時間中のメール使用
労働者が勤務時間中にメールを私的に利用していることを理由として解雇することができるでしょうか。
現在の日本の裁判例などでは、私用メールだけを根拠にした解雇の事例はありません。
ただし、程度にもよるが、解雇の適法性を判断する一要因とされることは十分あり得ます。例えば職務怠慢の一事情として、私用メールの利用に加えて業務態度が怠慢であるような場合には解雇が許される場合もあります。
また、解雇が許されなくても、その他の懲戒処分(戒告、減給)が許されることもあります。
メールの私的利用は、インターネットを使うことで容易に行うことができるので、使用者労働者間でメールの私的な利用について決めておくことがこういった紛争を避ける一番の方法だと思います。
メールの監視が許されるか
では、使用者は、従業員のメールのやり取りを監視することが出来るでしょうか、そのようなことをするのがプライバシーの侵害にはならないでしょうか。
この問題は、旧労働省2002年12月20日「労働者の個人情報保護に関する行動指針」で、「使用者は、職場に置いて、労働者に関しビデオカメラ、コンピューターなどによりモニタリングを行う場合には、労働者に対し、実施理由、実施時間帯、収集される情報内容などを事前に通知すると共に、個人情報の保護に関する権利を侵害しないよう配慮する」と定められており、必要性があれば許されると言った単純な問題ではありません。
この点について、F社Z事業部事件という裁判例では、原告が、職場の上司であった被告に対し、被告からセクシャルハラスメント行為を受けたこと、原告の私的な電子メールを被告が原告らの許可なしに閲読したこと、を理由として、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案で、裁判所は、「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解するのが相当である。」と判断しました。
メールの監視が必要である場合でも、一方的に決めるのではなく、労使双方でルール作りをすることが必要であると言えます。