寮費が日本人の10倍!?
寮費の天引き
現在、ベトナムからの外国人研修生・技能実習生として来日されていたAさんの事件を担当しています。
外国人研修生は、研修が目的なので、単純労働に従事させてはならず、時間外労働なども許されていません。しかし、Aさんは、来日当初より、研修先企業で時間外労働をさせられ、しかも時給が400円しかもらえませんでした。
2年目以降の技能実習生に移行すると、労働者として認められるため、会社もさすがに残業代を400円とするわけにはいかなかったのですが、今度は、寮費(会社提供の寮に住んでいました)として毎月4万6000円を給与から天引きされました。
日本人の10倍!
金額だけ聞くと安いじゃないかと思われるかもしれませんが、築40年の2DKの狭い部屋に、最大4人で住まわされていたのです。家の改装などは全くされておらず、壁や床も傷だらけです。
同じ地域の家賃相場を調べると、2DK一部屋で4万円から5万円でした。会社は同じ金額を4人から控除するので、4倍の家賃と言うことになります。
さらに驚いたことに、同じ寮に住んでいる研修生以外の外国人は一部屋で4万円でした。日本人に至っては、一部屋2万円です。Aさんは日本人と比べると10倍の家賃を控除されていたことになります。
最低賃金の隠れ蓑
なぜこのような事が起きているのでしょうか。問題の根本は、研修のための制度であるはずが、低賃金・単純労働のために利用されているからです。かつては、実習生でも時給300円、400円で働かせていましたが、裁判で問題にする中で、行政の指導も入るなど、さすがに表だっては出来なくなりました。
それが、今度は、表向きは最低賃金を払いながら、家賃等を過大に控除することで実際には最低賃金以下の低賃金で働かせていのです。
Aさんは、提訴後に帰国しましたが、日本での思い出が悪い思い出ばかりにならないように、良い解決が出来たらと願っています。
弁護士 加藤悠史