年末の生活保護申請に同行して
弁護士会ホットラインで
昨年末、愛知県弁護士会は、12月24日という、世間がクリスマスという無謀な日に、「派遣・労働、多重債務、生活保護ホットライン」を開催しました。私自身は、業務の都合もあって、ホットラインに自体には参加できなかったのですが、かなりの相談が入ったそうで、本部ではてんてこまいだったそうです。それだけ、世の中があれていると言うことなんでしょうね。
そのホットラインに電話をしてきた人で、9月に職を失ってから、収入も貯金も家もないということで、生活保護の申請にいったところ、住居がないという理由で窓口で受け付けてらえなかったというAさんの相談がまいこんできました。Aさんは、現在北区にいるというので、近くである当事務所に応援要請の連絡が入り、私が緊急で対応しました。
生活保護の申請を拒否
さっそく事務所にきてもらい、詳しく話を聞くと、9月に仕事がなくなってから、現在まで友人に泊めてもらっているとのこと。友人宅に寝泊まりしているのかと思えば、友人の車を借りて住んでいるのだそうだ。しかも、真冬の寒い中、服一枚掛けて寝ていたという。さらに、役所に相談すると、住居がないと生活保護を受けられないと言われたそうだ。
ここで、生活保護の制度の多少説明をしておくと、住居がなくてもホームレスでも生活保護は受けられます。よく、役所は働けとか、親族の援助を受けろだとか色々な理由をつけて、申請させまいとしますが、これらは拒否する理由にならない違法な対応であることが多いです。
Aさんのケースもまさにそのようなケースでした。これは、何とかしなくてはと思い、すぐに北区役所に一緒に行き、生活保護の申請と一時保護を申し出ました。
生きる希望と役所の無責任さ
しかし、区役所は、弁護士が行っても、家族の援助は受けられないのか等と相変わらずの対応です。また、自立支援センターへの入所を執拗に勧め、「生活保護の申請しても、扶助が出る名目なんかないんじゃない」とあくまで生活保護を使わない選択を迫ってきます。しかし、本人の希望は生活保護を受けて仕事を探すことであったため、私は「とにかく今日、生活保護の申請をするから申請書をくれ」と伝え、その日、申請書を出し、一時保護も受けられることとなりました。
しかし、一時保護も、その日は夕方すぎていたため、次の日からしか入れず、放っておくわけにもいかず、その日は我が家に泊めることにしました。食事も一緒にして、色々な話が聞けたのもあったのか、彼はふとホットラインの案内のある新聞記事を見せてきて、「これにかけていた。電話が繋がって自分はラッキーだった。」と言ったのです。役所の対応に失望し、生きる希望も見いだせずにいたそうだ。
話を聞くにつれ、私たち弁護士の取り組みの重要性を感じるとともに、本来、責任をもって対応すべき役所の無責任さを痛感しました。
年末年始は、派遣村で大量の人が救われたというニュースがテレビを賑わしていましたが、民間の支援者が運動したために、厚生労働省が動かざるを得なくなったのが現状で、役所が自発的に動いたわけではありません。そういう意味では、市民の運動の重要性も感じられます。
私が一緒に活動したAさんは、年始に無事保護を受けられることになりました。
弁護士 加藤悠史
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