子どもを巡る法律問題〜(3)養育費について
養育費について
1 養育費の趣旨
子どもをもつ夫婦が離婚したとき、子どもは夫婦のどちらか一方が引き取って育てることになります。ただし、未成熟子(親から独立して生計を営めない子)を養育すべき義務は、親である双方が負います。親権者とならなかった親であっても同様です。子どもと一緒に暮らしていない親は、未成熟な子どもが独立し自活できるようになるまでに必要な費用(養育費)を分担するという形で、子どもの養育に関わっていくことになります。?
つまり、養育費はあくまでも子どもに対して親が責任を持って支払わなければならない費用です。したがって、親同士が合意をして養育費を支払わないとすることはできません。親同士の協議や調停を経ても額が決まらない場合には、審判により裁判所が額を決定することになります。?
2 養育費の計算の仕方
では養育費の額はどのように決めればいいのでしょうか。養育費の支払義務は親が子どもに対し自分と同程度の生活をさせるべき義務である、と理解されています。したがって、養育費をいくら分担すべきは、子どもと同居していたときと同様に、親の生活水準によって異なることになります。裁判所の実務では、?両親の収入額、?子の生活に必要な費用の額、?親の負担能力などを考慮して計算し、その計算結果に基づいた「算定表」と呼ばれる表を参照しています。この「算定表」は、裁判所のホームページにも上げられています。?
もっとも、現実の子育ては、個々の当事者に特有な事情や社会経済情勢の変化など色々な事情に影響を受けています。「算定表」は、そうした色々な事情をすべて考慮しているわけではありません。そのため、「算定表」の額は参考にしつつ、これにこだわりすぎず額を柔軟に定める場合もあります。?
3 教育費
ところで、子どもの生活に必要な費用には何が含まれるでしょうか。衣食住や医療費だけでなく、自立した社会人として成長するためには教育費も必要となります。最近では多くの子どもが高校に進学するので、教育費には、高校の授業料、教材費、塾や家庭教師の費用、クラブ活動費なども含まれうるといえます。また、両親の学歴や生活水準からみて、子どもを親と同程度の水準の生活をさせるうえで大学に進学させることが必要、と言える場合には、大学の入学費用や授業料なども養育費に含まれ得ます。?
4 額の変更
養育費は、一度決めたらずっと同じ額を支払わなければならない、というわけではありません。事情の変化に伴い、後から額を増減することができます。例えば、子どもを引き取った方の親が後に再婚した場合などには、再婚相手からの扶養も期待できるので、養育費の減額をすることができます。
5 いつまで支払うか
子どもが成人に達すれば、多くの場合、自分で働き生計を立てることが期待できます。そのため、子どもを養育・監護するものとしての養育費の支払義務は、原則として子どもが成人に達するまでで終了します。?
もっとも、終了時期を必ず20歳にしなければならないわけではありません。子どもが親と同程度の生活水準を保持するために必要かどうかの観点から、「高校を卒業する年の3月末日まで」「満22歳を迎える月の末日まで」などと定めることも可能です。
2012/9/6
弁護士 矢崎暁子
(ホウネットメールマガジンより転載)
−
連載「子どもを巡る法律問題〜(1)親権」の記事は↓↓↓
http://www.kita-houritsu.com/?p=3685
「子どもを巡る法律問題〜(2)離婚後の親子の面会交流」の記事は↓↓↓