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遺言のススメー相続を『争続』にしないために

2009年08月06日

★ 相続ならぬ『争続』

 親が亡くなったとき、往々にして兄弟姉妹間で相続紛争になることがありますが、これを揶揄して、相続ならぬ『争続』と呼んだりします。この相続紛争の背景には、現行民法(相続法)のもとでの相続の考え方と旧来の人間関係の中での相続の考え方に大きなギャップがあるのではないかと思われます。

★民法改正と市民意識のギャップ

 旧民法では、親である戸主が死亡した時は、(主に)長男が、戸主の地位とともに全ての財産を相続することが定められていました(家督相続)。
これに対して戦後作られた現行民法では、兄弟は全て平等で、親の財産は、2分の1は配偶者(以前は3分の1)で子どもらが残り2分の1を平等に分け合うというのが原則となり、相続関係は大きく変わりました。
しかしながら、社会的な意識はこの民法改正=家族法の大変革に付き従っておらず、依然として長男中心の家族意識、つまり、長男が親の面倒を見る代わりに親の財産は長男が全て引き継ぐ、といった旧来の考え方が支配的でした。その意識は今でも残っていると思います。
この家族法の大改革と市民意識のギャップが、兄弟姉妹間での紛争を引き起こす背景となっています。
曰く、「俺が面倒見てきたのだから」「俺は長男だから」(長男の言い分)、「法律に従って平等に」「お兄ちゃんだけが看てきたんじゃない」(他の相続人)などです。

★親の介護は相続でどう評価されるか

 さらに最近は介護の問題が影を落とします。長男以外の兄弟姉妹が長年年老いた親の介護を行ってきた場合には、自分こそほかより多くの遺産をもらう権利がある、との主張が出されます。親の介護の大変さと親からもらえる財産との間に対応関係を求めてしまうのです。
それぞれが相手のいい分に納得して引けばいいのですが、なかなかそうもいかず、一度こじれてしまった人間関係は、付き合いが長いだけにいっそう修復が困難で、結局相続紛争になってしまうのです。

★遺言のススメ

 自分が生きているうちに、このような子どもたちの相続紛争の芽を摘んでおいた方が良いのではないでしょうか。そのためには、自分が元気なうちに遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。遺言は、自分にとって最後の意思表示です。ぜひとも最後の意思を形に残しておいて、遺族の間での紛争を未然に防ぎましょう。
遺言書を書くというのは、自分の死をイメージするもので何となく縁起が悪いとか、気が乗らないといったこともあるでしょうが、自分のこれまでの生きてきた道、家族らとの思い出を振り返りながら、自分の財産をどのように扱いたいかを考え直す機会でもあり、貴重な体験になると思います。遅くとも50歳代後半になったら、一度は遺言書を書いてみてはいかがでしょうか。
【具体的な遺言書の書き方は、次回ご紹介します。】

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