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有期雇用契約(契約社員、期間社員)に関する規定が変わります

2012年08月07日

有期雇用契約に関する規定が変わります

 2012年8月2日に労働契約法が改正されて、雇用期間を定めた有期雇用契約に関する規定が加わりました。有期雇用とは雇用期間に定めのある雇用形態で、契約社員、期間労働者などと呼ばれています。これに対応するのが期間の定めのない雇用であり、正社員の多くはこの形です。

 これまで、有期雇用について規定をした法律はほとんどなく、裁判例の積み重ねが法律の代わりとなってきましたが、一般に、有期雇用の社員は期間の定めのない雇用の正社員に比べて身分が安定せず、かつ給与等の待遇面でも差別的な取り扱いがなされてきました。

 今回の改正の目玉は、契約が更新されて通算期間が5年を超える場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約へ転換することが義務づけられたことです。たとえば、期間1年の雇用契約でも、それが5回目の更新となり、通算の雇用期間が5年を超える場合には、本人の申出により期間の定めのない契約にすることができます。

 この改正に関連して「5年経つと期間の定めのない雇用に変わってしまうから、5年になる前に雇い止めをしないといけない」と考える経営者が増え、5年未満での更新拒絶(雇い止め)が頻発すると心配する向きもあります。しかしながら今回の改正では、同時に、有期雇用の労働者の契約期間終了に際して、更新拒絶に合理性がなく、社会通念上相当でない場合には、使用者が契約更新を拒むことは許されないと規定されました。これまで裁判例で積み重ねられてきたことが、法律の明文上定められたのです。

 もちろん、「合理性」「相当性」という抽象的な規定ですので、法の趣旨に反して違法な雇い止めを強行する使用者がいることは容易に想像でき(今回の規定改正の病理現象、副作用)、違法な雇い止めがなされた場合には訴訟等でその効力を争わざるを得ない点で、まだまだ不十分といわざるを得ません。したがって、この規定を一定の歯止めとして活用し、期間の定めのない雇用への転換規定を実効性あるものにしていくことが重要です。

 また、これまで有期雇用と期間の定めのない雇用で、やっている仕事内容や責任に差がないのに、有期雇用であるからといって給料を安くされたりしてきましたが、今回の改正では、有期雇用であるからといって給料を安くしたり、待遇に差を設けることは許されなくなりました。

 今回の法改正には、上記のような一定の前進面もありますが、そもそも有期雇用という形態を制限する、いわゆる「入り口規制」が定められなかったことは大きな不十分点で、今後、この点についても規定させる運動が必要です。

2012年8月7日         弁護士 白川秀之

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