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気持ちはわかる!〜身近な判例紹介〜第4回

2012年05月02日

気持ちはわかる!〜身近な判例紹介〜
第4回 隣人トラブルに悩まされたマイホーム購入者さん

 このコーナーも第4回を迎えました。そろそろ書籍化の話が来るのではないかとわくわくしています。

 今回は、せっかく買ったマイホームでひどい目にあったある人のお話です。

【あらすじ】

 妻と3人の幼い子を持つXさんは、マイホームのための土地と建物を、2280万円で購入しました。売主は前の居住者であるYさん。仲介業者は大手のA社です。
しかし、契約締結後、子どもとともに新居に来てみたXさんは、隣の家に住む人から「うるさい」と苦情を言われ、その後も、「あんたのガキうるさいんじゃ」「Y(前の居住者)みたいに追い出したるわ。覚悟しいや」などと言われたり、建物にホースで水をまかれるなどひどい目にあいました。
「覚悟しいや」って・・・極道の妻じゃないんだから。これはあまりにXさんがかわいそうです。
結局、Xさんは、この家ではとても静かに暮らすことはできないと考え、引越し前に居住を断念しました。せっかく買った家に、1日も住むことができなかったのです。
「売主である前居住者と仲介業者のA社は、こんなひどい隣人が住んでいるということを売るときにきちんと説明すべきではなかったか?」。 こんな気持ちからXさんが両者を訴えたのが、今回の裁判です。

【裁判の結果】

 一審はXさんの請求を棄却しましたが、二審は損害賠償を一部認める判断をしました。その理由は以下のとおりです。
まず、Xさんが購入する前にはYさんが住んでいましたが、Yさんも隣人から「子どもがうるさい」と怒られたり、洗濯物に水をかけられる、泥を投げられるなどの被害を受けていました。
また、A社の従業員は、Xさんの前に別のお客さんを内覧させたことがありましたが、この時も隣人から「うるさい」という苦情があり、購入の話が流れていました。
こうした経緯を踏まえると、Yさんは売主として、A社は仲介業者として、厄介な隣人の存在について、買主のXさんにきちんと説明すべきでした。したがって、YさんとA社には「説明義務違反」があったとして、Xさんに生じた損害を賠償する責任があるのです。
もっとも、損害については、「隣人のせいで家の価値は下がったが、住めないわけではない」ということで、購入金額の20%(456万円)だけが認められました。Xさんとしては、20%値下げして別の人に売れれば問題ない(元は取れる)のでしょうが、この隣人のことをきちんと説明したうえで買ってくれる人が、果たして現れるでしょうか?

【一言】

 実際に住み始めた後に、今回のような隣人トラブルに悩まされている方の相談は少なくありません。少なくとも、購入前に分かることはしっかりチェックしておきたいものです。
そのためには、売主や仲介業者が「説明義務」を尽くすことはもちろんですが、買主も自分でできる限りの調査をしておくべきでしょう。一生に一度の買い物ですから、後悔のないようにしたいですね。

弁護士 鈴木哲郎

今回の裁判の詳細は、以下のページに掲載されています。http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200609.html

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