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交通事故(4)〜休業損害

2011年11月24日

 休業損害とは、交通事故によるケガで仕事を休んだために、現実に減少した収入額であり、当然これも事故と因果関係がある以上、その減収分を請求できます。
休業損害の額は、基本的には事故前の収入を基礎に収入日額(基礎収入)を計算して、「基礎収入×休業を要した日数」という計算式で算出した金額となります。と言えば簡単なようですが、実際にはいくつかの問題で交渉が難航します。

【基礎収入の算定】

 まず第一に、基礎収入の算出に当たって多くの問題が生じています。

 会社員のように給料額が給料明細ではっきりしている場合は比較的争いは多くありません。

 しかし、事業所得者の場合には毎月の収入額というのが一定しないため、どのように基礎収入を算定するのかが問題となります。この場合、確定申告に基づく前年の年間所得を基礎として、そこから収入日額を算出するのが一般に行われています。ただ、前年の収入と今年の収入に大きな変動がある場合、特に今年に入って収入が大幅に増加しているような場合には、少なかった前年の収入を基礎とすることは不合理ですが、保険会社は簡単には認めようとはしません。

 また、いろいろな事情で確定申告をしていない場合には、いくら資料があっても前年収入を基礎とすることができません。そのような場合には賃金センサスといって厚生労働省が発表している勤労者の平均賃金統計の数値を利用して、基礎収入とするのが一般的です。

 また、専業主婦のような家事従事者の場合、現実の収入というものはないのですが、家事労働も財産的評価が可能であるとの最高裁判決が出てからは、賃金センサスに基づく女子労働者の平均賃金を用いて、休業損害が認められるようになっています。

 そのほかにも、会社役員の報酬とか、学生や無職者などの場合の基礎収入の算定についても、問題となるケースが多くあります。

【休業日数】

 次に、休業を要した日数という点についても多く争いになります。
休業を要した日数というのは治療期間・日数とは必ずしも一致せず、治療中であり、かつ就労が不可能であった日数ということになりますので、「就労不可能」という医師の判断が必要となります。したがって、就労が可能な程度の軽傷であった場合には、休業損害の請求ができないことになります。
この「就労不可能」という評価を巡ってもしばしば保険会社と意見が対立します。
このように、一般論として当然に損害の範囲に含まれると考えられるものについても保険会社と意見の対立が生じる場合があることを念頭において、保険会社と交渉されることが必要です。

2011/10/31
弁護士 伊藤勤也
(ホウネットメールマガジンより転載)
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(連載の他の記事は下記のとおりです)
交通事故(1)〜請求の相手方、損害の種類(概要)

交通事故(2)〜自賠責保険と任意保険

交通事故(3)〜後遺障害

交通事故(5)〜逸失利益

交通事故(6)〜過失相殺

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