債権の回収(11) 相殺
今回は相殺についてお話しします。
取引先が売掛金をなかなか支払ってくれない、そんな場合に、その取引先も自社に対して売掛金(こちらからすれば買掛金)を持っていれば、その売掛金と買掛金を相殺してしまうのがよいでしょう。
たとえば、自社が取引先に対し80万円の売掛金を持っており、取引先が自社に対し100万円の売掛金を持っているのであれば、相殺により80万円の限度で双方の債権が消滅し、取引先の20万円の売掛金のみが残ることになります。
相殺というのは、お互いの持っている債権を打ち消し合うだけで、実際にお金の移動がなされないことから、普通の債権回収とは違った印象を受けるかもしれません。
しかし、自分の持っていた売掛金のみに着目すれば、強制的に履行(弁済)させたことと同じ効果が生じますので、やはり相殺も債権回収の一手段といえるのです。
相殺は、原則として取引先に対する一方的な意思表示によって行いますので、「売掛金と買掛金を対当額で相殺します」という通知を(必ず内容証明郵便で)送ります。
その際、売掛金と買掛金の特定(いつ、どのような取引で発生したか等)ができているか、相殺を行うための法律上の要件をクリアしているかといったチェック事項がありますので、通知を送る前に一度弁護士に見てもらうとよいでしょう。
さらに、現時点で買掛金がない場合でも、取引先から商品等を購入して買掛金を新たに作った上で相殺を行うという方法もあります。しかし、これを行うに当たっては、購入した商品が自社に必要なものか、あるいは転売ができるかといった点を慎重に検討する必要があるでしょう。
2011/8/4
弁護士 鈴木 哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)