借地借家問題(3) 更新料制度について
借地借家問題(3)
―更新料制度について―
4月は、いろいろなことのスタートの時期です。
賃貸建物に住んでいる方の中には、賃貸借契約の更新が行われて、更新料を支払ったという方もいるのではないでしょうか。
更新料制度は、お国柄といいますか、慣習的にあまり採用していない地域もありますが、書店で市販されている建物賃貸借契約書のひな形には、更新料支払いの規定が入っているのが一般的です。内容は、たとえば2年契約の建物賃貸借であれば、2年ごとに1〜2か月分の賃料相当額程度の金銭(更新料)を支払うものが多いようです。
しかし、この更新料制度、有効か無効か、実は、厳しく争われています。
更新料は、法律上決まっているものではなく、大家と借主の合意で支払うことが約束されてはじめて発生するものです。更新料というものが法律的にどのような性質を持っているのかについては学説や裁判例などによって様々な見解がありますが、賃貸借契約は、契約が更新されることが原則であるにもかかわらず、なぜ期間毎に金銭を支払わなければならないのかを、説得的に説明するのは難しいのです。
そこで、これはおかしいのではないかと言うことで、平成19年頃から更新料訴訟が多く起こされるようになりました。この訴訟は、借主側が、更新料条項は消費者契約法10条(「消費者の利益を一方的に害するものは無効とする」という法律)に違反しているので無効であると主張して、大家に対し、不当利得返還請求、又は更新料条項の使用差し止めの判決を求めたものです。
当初は、更新料制度を有効とする判決が多かったのですが、平成21年夏頃から、これを無効(つまり更新料の支払いは不要)だとする判決が現れ始めました。そして身近な法律問題だけに、今も、多くの更新料訴訟が、地方裁判所・高等裁判所に継続しているのですが、高等裁判所の判断が分かれているため、最高裁判所の判断が待たれています。
現在、最高裁判所には3件の更新料訴訟が係属しており、今年の夏にも判決になるのではないかと言われています。
おかしいなと疑問を持った借主たちの運動によって、長い間、当たり前のように思われていた更新料制度の有効性が揺らいでいます。
みなさんも関心を持って新聞やニュースを見ていてください。
2011/4/15
弁護士 山内益恵
(ホウネットメールマガジンより転載)
---
(連載の他の記事は下記のとおりです)
・借地借家問題(1) 退去時の原状回復義務について
・借地借家問題(2) 大家さんからの条件変更通告について
-----