債権の回収(5) 強制執行
前回は、債務名義についてお話ししました。
債務名義の中には「確定判決」というものがありましたが、裁判を起こした結果、
たとえば「被告は原告に対し100万円を支払え」という確定判決が得られたとしましょう。
これを受けて債務者(被告)が債権者(原告)に対し素直に100万円を支払ってくれれば問題ありません。
しかし、相手がそのとき現金を持っていなかったり、持っていても意地になって払ってこないこともあるでしょう。
そんなとき、「強制執行」が必要となります。
強制執行とは、債務者の財産を差し押さえて強制的に現金に換え(これを「換価」といいます)、
そこから債権者が配当を受けるという手続です。
債務者の財産としては、以下のようなものが考えられます。
(1)不動産
不動産(土地や建物)は換価価値が高いため、債務者が不動産を所有しているならば、それを強制執行の対象とするのは効果的です。
(2)預金
債務者が金融機関に預金を有する場合は、その預金(これは金融機関に対する債権です)を
差し押さえる方法が有効であり、また実務的にもよく行われています。
(3)給料・報酬
債務者が従業員・役員として勤務している場合は、その給料債権・報酬債権を差し押さえると、
債務者が勤務している限り、その勤務先から直接金銭の支払いを受けることができます。
ただし、支払いを受けられるのは給料額の4分の1のみです。
(4)売掛金
債務者に回収していない売掛金があると、その売掛金債権を差し押さえることにより、回収が可能です。
ただし、差し押さえに当たっては、債権の特定のために、売掛先が誰か、
売掛金がどのように発生したかといったことの特定がある程度必要となります。
上記の他にも、自動車や貴金属等の動産、特許権等の知的財産権など、強制執行の対象となる財産はいろいろ考えられます。
強制執行に当たっては、債務者の所有する資産を調査し、換価可能な財産を発見することがまず重要になってきます。
2010/2/2
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)