債権の回収(4) 強制回収
さて、前回は弁済督促について解説しました。
督促のやり方は法律の専門家よりも経営者の皆さんの方がよくご存じかもしれません。
しかし、いくら督促しても支払ってくれない場合には、ほかの方法を検討しなければなりません。
債務者から直接回収する財産の見込がある場合には、強制執行による回収が考えられます。
強制執行をするためには、債権があるとか契約書があるというだけではダメで、債務名義が必ず必要になります。
債務名義といわれても何だか分からないと思われるかと思いますが、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を証明した公の文書のことです。
具体的には
(1)確定判決、仮執行宣言付支払督促(2)和解調書、調停調書(3)執行証書
などがあります。
では、債務名義はどうすれば取得できるでしょうか。
(1)判決
判決を得るためには訴訟を提起する必要があります。
場合によっては費用や労力がかかりますが、債務者の意向に関わらず行うことができます。
訴訟にも通常訴訟のほか、60万円以下の請求の簡易な事件の場合の少額訴訟、手形金を請求する場合の手形訴訟などがあります。
(2)和解調書、調停調書
裁判等の手続中に話し合いがまとまれば、和解調書が作られ、これも債務名義になります。
また、民事調停や家事調停で調停がまとまれば調停調書が作成されますが、これも債務名義になります。
(3)執行証書
強制執行ができる公正証書のことです。
公正証書のうち、
(ア)金銭の一定額の支払い等を求める内容のもので、
(イ)債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行受諾文言といいます)が記載されている場合に、
公正証書も債務名義となります。なんでも公正証書があれば強制執行ができるわけではないことは注意が必要です。
事前に話し合いがまとまっている場合には、迅速に債務名義を得ることができるため債務者が協力的な場合には有効です。
その他、支払督促など債務名義を得るための簡易な手続もありますが、債務名義を得たら、次は強制執行をしなければ債務名義だけでは何の満足も得られません。
次回は、強制執行の種類などについて説明します。
2011/1/21
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)