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取締役の責任4 取締役の競業及び利益相反行為の禁止について

2010年11月12日

 中小企業 今回は、取締役の競業及び利益相反行為の禁止について説明します。

 取締役は、会社の機関として会社の利益の確保と増大のために忠実に業務を行うべき義務があります(会社法355条)。ここから、競業の禁止、利益相反行為の禁止という原則が出てきます(会社法356条)。

 競業禁止とは、会社が行っている事業と同一の事業を取締役が行ってはならないというものです。取締役が、自らあるいは親族等の個人的利益を図るため、会社の事業遂行の過程で知り得た知識や取引先との関係を利用し、自ら別会社を立ち上げあるいは親族に立ち上げさせ、別会社に仕事を回したり利益を落としたりすることを禁止するものです。

 私が担当した実例では、産業廃棄物処理業の同族会社の社長が、自分の息子を代表者にした別会社を設立させ、そこに得意先の仕事をまわしたり、従業員に別会社の仕事をさせたりして、社長の兄弟とトラブルに発展したケースがあります。

 利益相反行為は、典型的には、取締役が自己または第三者のために会社と取引をすることです(同条1項2号)。例えば、家族の所有不動産を会社に売却したり、逆に購入したりする行為を取り上げると、会社と取締役の利害が客観的には相反することになりますので、これを原則的に禁止するものです。

 私が扱った事例では、ある商品を輸入販売する会社の取締役が、自分が経営する別会社に通関業務、運送業務等を委託し、不当に高額の業務委託料を支払っていたため、株主が損害賠償請求訴訟を提起したものがありました。

 取締役個人の債務、取締役の親族が経営する別会社の債務について、会社が連帯保証することも、利害相反行為となります(同条3項目)。

 これらの競業行為、利益相反行為に該当すると考えられる場合には、重要事項を開示した上で株主総会の承認の議決が必要となります。

 上記のような行為によって会社に損害が発生した場合には、取締役に賠償責任が生じます。その際、当該取引によって取締役又は別会社が得た利益の額が、会社の損害額であると推定できるという規定が、会社法423条2項です。これは、会社の損害の立証の負担を緩和して、責任追及を容易にしようとした規定です。

2010/11/9
弁護士 長谷川一裕

(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)
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