労働者の健康と安全(12)
−続・通勤災害について−
今回は、前回の通勤災害についてのお話の続きです。
前回、「住居と仕事場との往復の経路から逸脱した場合」や「往復を中断した場合」には通勤に当たらないということを述べました。通勤に当たらなければ、事故にあっても労災保険がおりません。では、「逸脱」や「中断」とはどういう場合を言うのでしょう。
この点については、通勤行為に付随して誰でもが行うような「ささいな行為」を除いて、一般的には「逸脱」または「中断」として取り扱われることになります。「ささいな行為」とは、たとえば自販機でタバコや飲み物を買った場合などです。他方、スーパーでの買い物は「ささいな行為」とは言えないので、スーパー内で事故にあった場合には通勤災害とは認められないのです。
そして、通勤の途中で「逸脱」または「中断」があると、その後は原則として通勤とは扱われません。しかし、これについては法律で例外が設けられており、「日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合」には、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。したがって、スーパーから出てすぐ帰路につけば、再び通勤に該当することになります。では、通勤途中に同僚と喫茶店でコーヒーを飲んだ場合はどうでしょう。
これは、「ささいな行為」に当たらず、また上記の例外にも該当しないため、その後、帰宅中に事故にあった場合は通勤災害とは言えなくなってしまいます。このように、色々と複雑なきまりになっていますが、要はまっすぐ家に帰らなかった場合には問題になるケースもあるということです。
子どもの頃によく言われた、「寄り道をせずに帰りましょう」という言葉は、大人になっても意味を持っているということですね。
2010/9/24
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)