労働者の健康と安全(7)
−労災保険−
今回からは、労災保険について解説していきます。これまで解説してきた労働安全衛生法は、主に、労働者の安全と健康を守るための予防策を定めた法律でしたが、労災保険は、万が一の事故が起きたときのための保険制度です。
労災保険は、労働者災害補償保険法という法律に基づいて定められていて、政府管掌の保険制度です。目的も法律に書かれていて、業務上及び通勤による災害に対する保険給付と被災労働者の社会復帰の促進、遺族の援護等を目的としています。
このように労災保険は2種類の災害が対象とされていますが、それぞれ、使用者の支配下において行った業務が原因となって発生した災害のことを業務上の災害といい、労働者が就業に関し住居と職場との間を合理的な経路及び方法により往復している間の災害を通勤災害といいます。業務上といえるかどうかや通勤といえるかどうかについては、難しい議論もあるのですが、これはおいおい説明していきます。
ところで、業務上の災害については、労働基準法に、使用者が療養補償その他の補償をしなければならないと定められています。つまり、もともと、使用者には責任が発生しているんですね。そこで、労働者が確実に補償を受けられるようにし、事業主の補償負担を軽減するために労災保険制度を設けたのです。
また、通勤災害は、直接には事業主に補償責任はありませんが、勤務との関連が強いという判断で労災保険の対象とされています。
そして、労働者を1人でも使用する事業者(一部例外有り)は、労災保険法の適用を受けることになりますので、事業主は保険加入の手続をとって、保険料を納付しなければなりません。保険料については全額事業主負担とされています。この場合の労働者は、パートやアルバイトも全て含まれますので、気をつけてください。
給付内容についても、2種類の災害に対応して、それぞれ、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などが定められています。
次回以降、給付の内容を解説していきたいと思います。
2010年7月5日
弁護士 加藤悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)