労働者の健康と安全(6)
−労安法の適用除外−
労安法は、労働災害防止に関する一般的な法律なのですが、実は、ある人たちについて、保護の対象から除外する規定を置いているのです。今回はこの点について見ていきましょう。
労安法の保護の客体(対象)というのは「労働者」ですが、この「労働者」を定義する中で、労安法は、「同居の親族のみを使用する事業または事務所に使用される者」を除いています。こうした人たちは、労安法の保護から除かれるわけです。
「親族」については、民法が「6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族」と定めています。配偶者というのは婚姻関係が必要ですので、内縁の妻はこれに含まれません。
(「親等」「血族」「姻族」といった言葉の説明は、ここでは省かせてください。)
たとえば、「妻の叔父」は、3親等の姻族です。
このような同居の親族のみで働く人たちを労働者から除外したのは、同居の親族の中では愛情が支配し、搾取のおそれのある使用従属関係がないと考えられているからです。この考え方が正しいかというのは、いろいろなご意見があるかもしれませんね。
そして、同居の親族「のみ」ですから、これ以外の者を1人でも使用していれば、この適用除外はなく、労安法による保護が及ぶことになります。その他の例外として、非現業(=郵便・国有林野・印刷・造幣以外の事業)の一般職国家公務員は、労安法の適用が除外されています。こうした人たちは、国家公務員法に基づく人事院規則により、労安法とほとんど同じ内容の保護が与えられているのです。労安法はあくまで「一般」的な法律ですから、「特別」な法律があれば、そちらが優先することになるわけです。このことは、「特別法は一般法を破る」という法格言にもなっています。
さて、労安法の基礎知識についての解説は今回が最後です。次回からは、労安法と同じく労働災害に関わる「労災保険制度」について解説する予定です。ご期待ください。
2010年6月21日
弁護士 鈴木哲郎
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)